震災復興へきめ細かい「心のケア」も課題
2019.03.14
東日本大震災の発生から8年を迎えた11日、私は都内で行われた追悼式に参列した。改めて、犠牲となられた方々のご冥福をお祈りし、いまなお避難生活を余儀なくされている方々を含め、すべての被災者にお見舞いを申し上げます。
これに先立ち、9日に福島県、10日に岩手県と相次いで被災地を訪れ、復興の象徴を視察した。
最初に訪れたのは、福島県楢葉町にある「Jヴィレッジ」だ。日本初のサッカーのナショナル・トレーニングセンターは震災後、東京電力福島第1原発の事故収束作業の拠点として、作業員の駐車場やプレハブ宿舎などで埋めつくされた。私もここで、防護服に着替えて発電所を視察したことがある。
それが見事に、緑鮮やかな芝生のサッカーコートと、日本初の全天候型屋内練習場に蘇った。常磐線の駅も新設され、やがて東京五輪を目指す選手たちでにぎわうだろう。
松本幸栄町長は「まだまだとはいえ、おかげさまで52・6%の元町民が戻ってきた」と報告した。
これからは、新しい仕事をつくり、雇用を生み出すことも大切だ。沿岸部は「イノベーション・コースト」構想の下、新エネルギーやロボット開発に力が入る。いわき市では、水素ステーションで燃料電池車が水素ガスを充塡(じゅうてん)し、走り出す実用化が始まった。
大学で人材を育て、地場産業と結びついて、「構想」が根付いていくことを期待したい。
翌10日は岩手県釜石市を訪れた。前日、安倍晋三首相を迎えて、東北を横断する「釜石自動車道」と「三陸沿岸縦貫道路」をつなぐ釜石ジャンクションで開通式が行われた。実感したのは、盛岡市との往復が大幅に時間が短縮されたことと、渋滞が出るほどの交通量だ。
被災地の人々が、内陸と沿岸をスムーズに行き来できるようになったことを、いかに喜んでいるかが分かる。
さらに、釜石市で最も被害の深刻だった「鵜住居(うのすまい)」地区に、ラグビー場が新設された。この夏から、ワールドカップの前哨戦がスタートする。
これからは、利用が伸びる釜石港のコンテナ埠頭(ふとう)も合わせて、産業や観光の発展にこれらを生かしてほしい。
インフラや災害復興住宅がほぼ出来上がった岩手県や宮城県では、孤立を防ぐために、新たなコミュニティーをつくることや、「心のケア」をきめ細かく行うことが課題となる。
原発事故で避難の続く福島県は、政府が責任持って今後も取り組み、その先の展望を示して安心感をつくる責任を忘れてはならない。
景気は楽観を許さない状況になってきた。内閣府が7日に発表した景気動向指数で、景気の現状を示す一致指数が3カ月連続の悪化となった。米中貿易摩擦などが影響し、世界経済の先行き不安も広がっている。
しかし、政府は「緩やかな回復」基調との見方を崩してはいない。安倍首相も今年10月の消費税引き上げは、「予定通り行う」と国会で答弁している。
リーマン・ショック級の経済の激変がない限り、消費税引き上げと社会保障強化は実行すべきである。G7(主要7カ国首脳会議)や、G20(主要20カ国・地域首脳会議)を生かし、予算を着実に実行して、経済の悪循環が起きないようにすべきである。
(公明党代表)
【2019年3月13日(12日発行)夕刊フジ掲載】