韓国のGSOMIA破棄 国家間の安保協力を脅かす後ろ向きの措置
2019.08.28
韓国は23日、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄を日本に通告した。21日に北京で行われた日韓外相会談の際は、韓国側も協定を継続するのではとの感触もあっただけに、破棄の決定に衝撃が走った。
河野太郎外相は決定を受け、南官杓(ナム・グァンピョ)駐日韓国大使を呼び出し、「現下の地域の安全保障環境を完全に見誤った対応」と遺憾の意を伝えた。
マイク・ポンペオ米国務長官も、北朝鮮の核・ミサイル対応に関する日米韓の迅速な連携を重視する観点から、継続を支持する立場を打ち出していた。そのため、「破棄の決定には失望した」と不満をあらわにした。
この協定は難産の末、2016年に結ばれた。北朝鮮のミサイル発射が相次ぐなか、発射から到達までの正確な軌道に関する情報を日韓双方が補完的に収集できる。情報の機密が保護され、迅速に共有できるようになって、即応性が向上した。
日韓間での情報交換ができなくなれば、米国を介してやりとりをしなければならなくなる。直接の迅速な情報伝達と間接的なものとでは、おのずと差はある。
韓国大統領府は、日本政府が輸出手続きを簡略化する優遇措置を受けられる「ホワイト国」から、韓国を除外する政令改正を閣議決定したことを挙げて、「両国間の安保協力環境に重大な変化をもたらした」と説明し、「協定を継続させることは国益に合わない」と判断した。
しかし、これにはがっかりしたし、理解しがたいものだ。
輸出手続きを厳格にしたのは、安全保障上の信頼関係を回復しようと促す前向きな国内的措置である。もちろん禁輸ではない。
一方、GSOMIAの破棄は、国家間の約束を破って安保協力を脅かす後ろ向きの措置である。本来結びつけてはならないものに拡大してしまっており、方向が逆である。
両国間のみならず、日米韓の連携にもヒビが入りかねない。結果的に、北朝鮮やその友好国を利することになってしまう。すかさず、北朝鮮は24日、日米韓の連携に揺さぶりをかけるかのようにミサイルを発射した。
実際のところ、日韓の防衛当局間では情報の交換は行われた。破棄の通告により、協定が終了する11月までは有効なので、防衛当局間では、これまでどおり情報共有をできるようにした。
そのうえで、菅義偉官房長官は25日、「日本の情報収集に加え、米国との情報協力により、日韓の協定が終了しても日本の防衛に支障を来すことはない」と述べた。
折から、フランスでのG7(先進7カ国)首脳会議に合わせて開かれた日米首脳会談で、安倍晋三首相とドナルド・トランプ米大統領は、北朝鮮対応で日米韓3カ国の連携を確認した。GSOMIAの破棄通告については具体的なやり取りは行われなかったもようだ。
ここは、日韓双方とも、冷静に地域の安全保障環境を見極め、事態をエスカレートさせず、日米韓の連携を保持する取り組みを行う必要がある。
(公明党代表)
【2019年8月28日(27日発刊)付 夕刊フジ掲載】