東京五輪・パラ開催に影響を残すな
2020.02.05
中国湖北省武漢市で発生した、新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大が止まらない。時々刻々と変化する状況のなかで、中国国内の感染者数はうなぎ上りで、死者数もSARS(重症急性呼吸器症候群)のときを超えた。アジアを中心に世界中に感染が広がる様相で、感染者数は日本が最多レベルである。
WHO(世界保健機関)は1月30日、この肺炎の感染拡大が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態に当たる」と宣言した。当初、同月22日、23日に緊急委員会を開きながら、緊急事態の判断を見送っていた。感染症の危機管理にあたる国際機関に対する期待感からすると、遅きに失した感がある。
日本政府は与党の提案も受けながら、WHOの判断を待つことなく、感染者の入国を水際で防ぐ措置を採り、入国者の健康をフォローアップして感染拡大を防止する態勢を強化してきた。
まず、1月28日には、法律に基づいて強制力を伴う措置もとれる「指定感染症」および「検疫感染症」に定める政令を公布した。さらに、WHOの「緊急事態宣言」を受けて、これを1日に前倒し実施することとし、対象を「肺炎」だけでなく「感染症」に広げた。
すでに、武漢市や湖北省に居住する日本人の帰国希望者をチャーター機3機で帰国させ、残る人々にも4機目を準備中である。日本から現地に向かう飛行機には、支援物資としてマスクや防護服を届けている。また、日本に滞在中の湖北省出身者にも中国のチャーター機派遣を受け入れ、日中の協力のもとで実施されている。
1日からは、湖北省に滞在歴のある外国人や、湖北省発行のパスポートを所持する人の入国を拒否する措置をとり、水際対策を強化した。中国全土との航空便停止措置をとる国もあるが、日本のように、歴史的に幅広い交流で人々の往来が多い国はそのような措置はとれない。
経済的影響も出始めた。
春節(旧正月)の大型休暇を利用する中国人ツアー客は激減し、中国向け製造業関連輸出にも打撃だ。中国国内のサプライチェーンも滞ってきており、今後、影響がずれ込んでいく。
当面、症状がないのに感染している人への対応に注意しながら、感染拡大防止に万全を期すとともに、経済的影響への対策をとる必要がある。
習近平国家主席の「国賓」訪日や、東京五輪・パラリンピック開催への影響を残さないように、早期収束に全力をあげるべきである。
一部野党は先週の国会審議までは、首相主催の「桜を見る会」などの追及に時間を割いていた。夕刊フジのサイトで行った世論調査で、「新型コロナウイルス肺炎などの議論をすべきだ」との声が96%に昇るなど、世論の厳しい視線を感じてか、3日から始まった衆院予算委員会の質疑からは、安倍晋三首相や加藤勝信厚労相の感染症対策のための離席を容認する方針に変わった。
与野党問わず、政治は、国民の命に関わること、最も心配することに正面から取り組む姿勢が大切だ。
(公明党代表)
【2020年2月5日(4日発刊)付 夕刊フジ掲載】