新型コロナ 感染防止で小中高校臨時休校
2020.03.04
安倍晋三首相は先月27日、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、全国の小中学校、高校や特別支援学校を今月2日から春休みに入るまでの間、臨時休校にするよう要請した。
学校現場が感染リスクを回避できるように、政治決断をしたものと受け止めたい。この1、2週間が重要な時期である。
政府は、英国船籍のクルーズ船の乗客・乗員やチャーター機による帰国者などへの水際対策が一区切りつくのを見越して、国内感染対策を強化するため、先月25日、「基本方針」を発表した。特に、「小規模患者クラスター(集団)の感染連鎖を防ぐことが重要だ」と指摘して、現行と今後の具体策を列挙した。
すでに、学校現場では、北海道や市川市、大阪市、堺市などで、自治体の判断による学校休校が行われている。教師や保護者、児童生徒にも感染者が出始めた。日常的に、長時間、集団で生活する学校は感染リスクが高まる。
万が一、学校現場で感染が確認された場合、自治体などの設置者は、関係者への影響が大きいだけに、対応に苦慮するだろう。個別の対応に任せるだけでは、感染連鎖が起きたとき、決断に手間取って後手を踏むことになりかねない。
そこで、あらかじめ安倍首相が「要請」というインパクトのあるメッセージを出したのは、学校現場がそれを受けるかたちで、感染リスクを低くする道を開いたものといえよう。
とはいえ、現場は、戸惑いと混乱の声がしきりである。
確かに、2日から臨時休校といわれても、学年末を控えて、春休みまでにやっておかなければならないことがたくさんあるし、子供も保護者も準備ができていない。
加えて、27日木曜日の夕刻の発表では、準備に当たるウイークデーは金曜日しかない。いかにも、唐突感を拭えないのである。
一部の野党やメディアは「桜を見る会」と同じようなトーンで政権批判を重ねるところまである。
しかし、感染者は、中国以外の国では、韓国とともに日本がクルーズ船を含めて数の多い国とみられており、このまま終息まで長引き、風評まで起きてしまったら、東京五輪・パラリンピックの開催すらできなくなる。今も、経済的影響が広がるなか、取り返しのつかない事態は断じて避けなければならない。まさに、正念場なのである。
これから、大切なのは、戸惑う人々の「不安」と「不利益」を丁寧に取り除くことである。
学校現場が地域の実情に合わせて休業の有無を判断する柔軟性があってよい。子供たちには、居場所を用意し、保護者には雇用や収入を確保することで、予測できた春休みと同等の状態にしなければならない。出入りの業者には補償を、臨時の仕事には報酬を与えるべきだ。教職員の苦労にも敬意を払う必要がある。
「要請」だけで済ませるのではなく、やるべきことに法律や予算の裏付けをつくることが政治の責任である。
(公明党代表)
【2020年3月4日(3日発行)付 夕刊フジ掲載】