国民の不安に対応する防衛力の組み立てを
2020.07.03
政府は6月26日、北朝鮮などの核・ミサイルの脅威に対応するはずだった地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備計画を断念することを明らかにした。
河野太郎防衛相は当初、迎撃ミサイルを発射した後に切り離すブースターを演習場内に落とすと地元に説明してきた。だが、技術的に困難であることが分かったとして、計画停止を発表した。
あまりに唐突な発表に、閣議決定までしたミサイル防衛構想の一角が崩れ、代替措置も示されないことから、与党側から反発の声が上がった。結局、候補地にあがった山口県と秋田県の演習場以外に、代替地を見つけるのも困難として断念に至った。
政府はこれまで、迎撃のためにイージス艦を海上に配備する代わりに、同様のシステムを持った「イージス・アショア」を陸上2カ所に配備すれば、ほぼ日本全土をカバーできるので、防御は安定しイージス艦配備の負担も軽くなると説明してきた。
この間、北朝鮮はミサイル発射実験を繰り返し、中長距離だけでなく短距離も含め性能を上げてきている。もはや「イージス・アショア」では対応できないとの指摘も出てきた。
ならば、「敵基地攻撃能力」の保有も辞さずとの声も出る。
しかし、政府は長年、「敵基地攻撃能力」を持つことは憲法で法理上は許されるが、現実の政策判断としては保有しないとしてきた。また、自衛権の行使として敵基地攻撃を行うことは想定していないとしている。
日米安保体制のもと、米軍は「矛」、自衛隊は「盾」の役割分担で、日本は専守防衛の基本を保ってきたのである。
「断念」を受けて、安全保障環境が厳しくなるなか、国民の生命や財産を守るために、どのように防衛力を組み立て直すか、国民の不安に対応することが求められる。
他方、ミサイル攻撃を未然に防ぎ緊張を緩和するため、多国間の安全保障対話の枠組みを日本が主導してつくっていく外交努力も大切である。
このところ、安倍晋三首相が、新型コロナ対応で自粛していた夜の会食を復活させるなかで、永田町では「10月解散・総選挙」説が取り沙汰されている。
来年9月までの安倍首相の総裁任期、冬場の新型コロナの再拡大リスク、来年の東京五輪などを考えると思惑が交錯しても不思議ではない。
先日の自公党首会談(6月24日)では、コロナ対応と経済回復に力をいれることで私と認識が一致し、安倍首相は「解散は頭の片隅にもない」と言っていた。
いつ解散するかは首相が決めることであり、解散権のない立場であれこれいうことは控えておこう。どのみち、来年の秋には衆院の任期満了なのだから、ウオーミングアップを始めるのは通例である。
コロナ対応で地元に帰れなかった議員が、困り切っている、弱り切っている国民の窮状を聞く姿勢が問われている。
(公明党代表)
【2020年7月1日(6月30日発行)付 夕刊フジ掲載】