熊本豪雨「人命と財産を守る治水を」
2020.07.15
九州南部に続き北部も襲った豪雨で、各地に甚大な被害が発生している。13日昼までに熊本県を中心に72人もの死者が出ている。お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りし、すべての被災者にお見舞いを申し上げます。
政府と自治体には、最優先で行方不明者の捜索救助と被災者の支援に全力を挙げてもらいたい。
温暖化の影響か最近、毎年のように大規模な自然災害が続いている。2年連続の九州北部豪雨、昨年の西日本豪雨、台風19号など、日本列島各地を襲った被害の記憶も消えていない。
私は先週11日、最も被害の大きかった熊本県各地を見舞った。移動中の車のフロントガラスを激しい雨がたたきつけ、ワイパーを最速にしても、雨と飛沫(ひまつ)で前がよく見えなかった。
球磨川は、急峻(きゅうしゅん)な谷の底を川幅いっぱいに赤茶色の激流が逆巻き、水煙を上げて轟々と流れていた。周囲の山肌には白い筋が幾つも走り、集めた雨を滝のように谷に落としていた。
人吉市で、90歳前後の複数の被災者に聞いた。「昭和40(1965)年7月3日に豪雨で球磨川が氾濫したときを覚えている。あの時より今回の方が圧倒的に水量は多い」と異口同音に訴えていた。
その昭和40年の水害を機に、治水対策として人吉市の手前で球磨川に合流する川辺川にダムが計画された。反対運動が起きて、民主党政権は「コンクリートから人へ」のスローガンを掲げ、建設を中止した。その後、「ダムによらない治水対策」が叫ばれたが、有効な対策がとられないまま今回の事態を招いてしまった。
先の高齢者の言葉は、端的にその間の結果を物語る。治水対策は護岸、堤防、河道掘削、情報伝達と避難などの合わせ技である。ダムも対策の幅を広げるものになる。復旧・復興のステージでは「人命と財産を守る治水」のために、冷静な検証と迅速な対策が必要である。
コロナ対策 政府も東京都も説明不十分
東京都で9日、新型コロナウイルスの新規感染者が224人にのぼった。1日あたりの感染者数としては、政府が緊急事態宣言を発令中の4月17日=206人を上回って最多となった。その後も200人を超える水準が続いており、数字が一人歩きして不安が広がっている。
政府や都の説明では、PCR検査を「夜の街」中心に積極的に行っているため、感染者数も若い世代の無症状者が増えており、現時点で、医療提供体制には余裕がある。直ちに緊急事態宣言を出す状況ではないという。
しかし、ここ2週間、同じ説明、言い回しが繰り返されている。この間、感染者数が増える一方なのである。
国民の心配は、東京以外にも感染が広がり、感染経路不明者も増えていることにある。中高年にも感染者が現れ、重症に及ぶ恐れが出てきた。政府と都から、この流れを食い止める説明が十分なされていない。
緊急事態宣言の副作用が大きかったために、「社会経済活動の拡大を止めたくない」との思いが強く出ている。両立を図る感染拡大防止の具体策を丁寧に説明し、国民の不安に応えてもらいたい。
(公明党代表)
【2020年7月15日(14日発行)付 夕刊フジ掲載】