「新しい生活様式」徹底を
2020.07.29
今月中旬から、東京や大阪などの大都市圏を中心に、新型コロナウイルスの新規感染者が増えている。感染者の数だけ比べれば、過去最多を記録する都府県が続出している。
しかし、前の感染ピークだった4月の検査は症状のある人を対象に行った陽性者の数であり、中高年者も多かった。最近は、夜の街などで積極的に検査を実施し、検査数も3~5倍に増えた結果、無症状の陽性者が多く、10代から30代の人が半分以上を占める傾向である。
緊急事態宣言での「自粛疲れ」もあって、解除後、社会経済活動のレベルが上がるにつれ、少し警戒が緩んだ気がする。
「感染拡大防止」と「社会経済活動」との両立は試行錯誤だが、重症者が増えて医療提供体制の逼迫(ひっぱく)を招かないよう、3密回避、マスク、手洗い、消毒など「新しい生活様式」を徹底して自分たちを守るしかない。
政府の観光支援事業「Go To トラベル」が22日から始まった。これは、新型コロナウイルスの感染拡大を抑止しながら、壊滅的打撃を受けている観光産業を援助し、800万人以上といわれる従業員と家族の暮らしを守るためのものである。
11日に訪れた熊本県人吉市で、被災した老舗旅館の女将(おかみ)が「緊急事態宣言でGWを含む2カ月間休業し、何とか立て直そうとGoToキャンペーンに賭けて準備していた矢先に、施設が被災してしまった。3重苦の私たちを助けてください」と訴えた。
被災した観光地の方々は気の毒である。観光産業のシェアは4%程度といわれるが、観光地は地域経済が裾野の広い関連産業に依存しているところも少なくない。祈るような気持ちで、キャンペーンによる客足を期待している。見捨てるわけにはいかない。
今夏は、学校の夏休みが短く、ファミリー客は例年ほど期待できない。貴重なチャンスとなる7月の4連休を活用しようと政府は前倒し実施を決めた。
ところが、折悪しく感染拡大のスピードが事業の準備を追い越した。東京都の小池百合子知事は「警報」を出し、都民に不要不急の都外移動の自粛と事業者への感染防止ガイドラインの遵守徹底を呼びかけた。
政府は、これに合わせるように、東京都発着の旅行を対象外とし、予約キャンセルで損失が出るところには補償もすることにして事業をスタートした。一部の野党やメディアは対応を批判するが、事態の急変に臨機応変することは当然だし、過剰に反応して観光産業に追い打ちをかけるようなことも避けることが妥当である。
立憲民主党と国民民主党が合流協議を始め、社民党も含めた新党構想も浮上しているという。有権者は、選挙互助会や政権運営の悪夢を忘れてはいない。失敗の本質を克服しなければ期待には繋がらない。
(公明党代表)
【2020年7月29日(28日発行)付 夕刊フジ掲載】