選手に「おもてなしの文化」で声援を
2021.07.21
東京五輪の開会式が23日に迫り、ソフトボールなどの一部競技は21日から始まる。世界中からアスリートや大会関係者が続々と来日し、先週末には入国のピークを迎えた。
コロナ禍での開催だけに、都内をはじめ大半の会場が「無観客」となった。入国時の水際対策が徹底され、バブル方式の採用で一般の日本人との導線が分離された結果、選手との触れ合いもない。
ただ、招致のプレゼンテーションで思い起こされるように、日本には「おもてなしの文化」がある。ワイドショーなどは連日危機を煽っているが、万全の感染防止策をとりつつも、世界中のアスリートたちに「日本はよかった」と思ってもらえるような心配りも大切である。
各国選手団が事前合宿をした地域では、ソーシャルディスタンスをとりながら、市民が歓迎の声援を送り、それに応える選手団の姿も見られる。
サッカーやバスケットなど事前の強化試合では、観客の声援の中で日本チームの健闘ぶりが光り、本番に向けた機運がいよいよ盛り上がりを見せている。
五輪史上、これほど「参加することに意義がある」大会もないだろう。自国の感染防止もままならないなか、選手団をやっとの思いで送り出してくれた国もある。多くの選手団を抱える国はクラスターなど出さないように細心の注意を払いながらの参加である。
厳しい制約の下で参加したアスリートを心から歓迎し、何とかベターなコンディションで競技に臨めるよう応援したい。国民の多くは、大会が始まれば、映像での観戦を楽しみながら、内外の選手に惜しみない声援を送ってくれるだろう。
アントニオ・グテーレス国連事務総長は15日、戦闘状態にある全ての当事者に、東京五輪・パラリンピック開催中の停戦と、その後の継続を呼びかけた。「平和の祭典」を開催すればこそ、コロナ感染の収束と復興の努力に合わせ、平和を求め、団結することが重要だとのメッセージが生まれたことの意義を噛み締めたい。
先週末の報道各社の世論調査で、菅義偉内閣の支持率が軒並み下がった。おそらく、東京を中心に、インド由来の変異株(デルタ株)が感染拡大しているうえ、緊急事態宣言に伴う飲食店への酒類提供停止をめぐる政府方針などに「露骨な圧力だ」といった反発が出たことが要因と思われる。
この結果は、謙虚に受け止める必要がある。内閣は「決して驕(おご)ることなく、真摯(しんし)な政治を貫く」という、自公の連立政権合意の原点に立ち戻るべきである。
度重なる緊急事態宣言の発令などで疲労感のある国民や事業者に寄り添う丁寧な姿勢と、効果の出始めたワクチンの接種体制を立て直し、日本経済の前進につなげる確信ある態度で望んでもらいたい。
(公明党代表)
【2021年7月21日(20日発行) 夕刊フジ掲載】