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ブログ「本音でズバッと」

故人の遺徳を偲ぶ趣旨にそぐわない

2022.08.03

参院選後初の臨時国会が3日召集される。6日には広島で平和記念式典が行われるため、会期は、参院の構成を確定し正副議長を選出して、短く終わる予定である。

当初、安倍晋三元首相の追悼演説が行われる観測が流れ、自民党の甘利明前幹事長で調整が図られていた。与野党から異論が出て、結局、追悼演説は今国会で行わず延期となり、登壇者も改めて再調整することとなった。

日程の俎上に載る前にこれだけ騒ぎになれば、一度冷却した方がよい。故人の遺徳を偲び、逝去を悲しむ追悼の趣旨にそぐわない。仕切り直して、静謐な追悼の環境を整える時間と努力が要るだろう。

慣例では、ライバルとして党首討論などで競い合った代表格となるが、安倍氏の「国葬」(国葬儀)への対応も見なければならない。遺族の意向も尊重したうえで、与野党そろってしめやかに見送りたい。

安倍氏の訃報から20日以上たつが、警備・警護のミスや事件の動機や不可解さを追及することよりも、政治家と旧統一教会の関係の方に、一部野党やメディアの関心が広がっているようだ。

本来であれば、安倍氏の銃撃事件そのものの問題点が解明されなければない。捜査と裁判を通じて事実が明らかとなり、再発防止策が確立されることが重要だ。この司法の過程を、立法や行政の側からゆがめるような言動は慎むべきである。

政治家が、旧統一教会やその関連団体とさまざまな関わりをもったことが取り沙汰されている。一般常識として、政治家が、社会的な問題やトラブルを多く抱えているような団体と関わりをもつことは控えるべきであろう。

もとより、宗教団体が選挙の支援をすることは、政治活動の自由(表現の自由)として憲法が保障している。また、政府が特定の宗教を援助したり、逆に圧迫したりすることを禁止して、信教の自由を保障するのが「憲法の政教分離の趣旨」でもある。

さらに、宗教団体が政治上の権力を行使することは、議会制民主主義、議院内閣制、法律による行政の諸制度のもとで、できないようになっている。

宗教団体が健全な政治活動や選挙支援を通じて、人権や人道的価値を政治に反映させていくことは、民主主義を支える基盤としてもっと大切にされてよい。

複雑にしているのは、旧統一教会が東西冷戦期に「国際勝共連合」という反共産主義の政治組織をつくり、共産主義と対抗する政治家が関係を深めたことから、その対立構造が背景にあることである。

これらの視点を踏まえると、安倍氏の「国葬」に対する向き合い方に関わっているようにも思える。何が課題なのか混同することなく見極めていくことが大事だ。

(公明党代表)

【2022年8月3日(2日発行)付 夕刊フジ掲載】