改造内閣には「いぶし銀」の実力を期待
2018.10.17
安倍晋三首相は今月2日、内閣改造を断行し、第4次安倍改造内閣がスタートした。安倍首相は「全員野球内閣」と名付け、地味に見えるが経験と専門性を持ち、高い調整能力を身につけた「いぶし銀」の実務型内閣だと胸を張った。
メディアでは早速、自民党総裁選で、安倍首相と争った石破茂元幹事長率いる石破派から起用された山下貴司法相や、唯一の女性閣僚として就任した片山さつき地方創生相などが話題となっている。
私が期待するのは、この内閣が最重視するテーマを担当する新閣僚である。
まずは、「災害対応」が当面の緊急課題であるため、山本順三防災相には注目している。西日本豪雨災害の被災地、愛媛県出身であり、秋の臨時国会に提出される災害対応の補正予算で仕事ぶりが試される。
公明党から留任となった石井啓一国交相とも力を合わせて、相次いだ災害の復旧・復興に取り組み、被災者の生活と生業の立て直しに汗をかいてもらいたい。
次に、「全世代型社会保障」への改革に取り組む、根本匠厚労相と柴山昌彦文科相である。デフレからの脱却の流れをさらに進め、消費税率10%への引き上げを来年10月に行う。
その際、税収の使い道を変更して、低年金者への支援給付や介護保険料の軽減拡大に加え、幼児教育の無償化や給付型奨学金の拡充、私立高校生の授業料実質無償化などの改革も進めていく。この重責を担うのが両大臣である。
安倍首相は15日夕の臨時閣議で、来年の消費税率引き上げに伴い、使途の変更、軽減税率の実施、かけ込み需要や反動減を抑える対策などを実行することを明言した。一部に、軽減税率の実施に様子見の空気があったが、これで準備を加速することが不可避となった。
根本、柴山両大臣は、麻生太郎副総理兼財務相や、世耕弘成経産相、茂木敏光経済財政相と連携して、改革を断行してもらいたい。
内閣支持率は、この改造で「横ばいか微減」にとどまった。期待値が上がらなかった分だけ、気負いなく、脇を締めて、「いぶし銀」の実力を出していけばよい。
世界同時株安は注意深く見守る
先週末、ニューヨーク市場発で、世界同時株安が起きたのには驚いた。政治家は市場に影響を与える発言は控えるのが鉄則だが、一時的な調整局面なのか長期的な下落傾向につながるのか、注意深く見守る必要がある。
米国連邦準備制度理事会(FRB)の利上げが続くと、長期金利が上がり、企業の金利負担上昇による業績悪化の不安が増す。新興国からドルが吸い上げられて通貨安を招き、経済不振に陥ることも心配だ。
また、米中貿易戦争が長引き、中国だけでなく、日本などの貿易関係国、ひいては米国にも悪影響が及ぶことも懸念される。
堅調な世界経済に与える、これらのリスクを警戒し、政策の国際連携を深めなければならない。(公明党代表)
【2018年10月17日(16日発行)夕刊フジ掲載】