日中関係改善「ようやく、ここまでたどり着いた」と実感
2018.10.31
安倍晋三首相は25日、日本の首相として7年ぶりに中国を公式訪問した。北京・天安門広場には、日の丸が掲げられ、同日午後の日中平和友好条約締結40周年レセプションが、日中友好議員連盟をはじめ各種友好団体の代表団も参加して、盛大に開催された。
安倍首相は、習近平国家主席らとの会談で、「競争から協調へ、日中関係を新たな時代へ押し上げていきたい」と呼びかけ、習主席も「日中関係が正しい軌道に戻った」と語り、幅広い分野で対話と交流を深めていくこととなった。
「ようやく、ここまでたどり着いた」という実感である。
民主党政権末期に、日中は極度の緊張状態に陥り、政治対話の道さえ閉ざされた。政権を自公で取り戻し、連立与党・公明党として2013年1月に訪中以来、習主席宛の安倍首相の親書を届けたのは、4度に及ぶ。
その間、安倍首相は、多国間会議の際、習主席らとの首脳会談を重ねてきた。曲折を経ただけに、これを機に、来年の習主席の訪日を実現し、首脳の往来を重ねたい。
二国間の公式訪問だからこそ、両国の多岐にわたる課題について前向きな合意をつくることができた。経済面では、第三国での民間協力、イノベーションや知的財産に関する協力対話の創設、通貨交換(スワップ)協定再開、日本産食品の輸入規制緩和などで成果があった。
安倍首相はODA(政府開発援助)の終了を通告し、今後、開発分野の人材交流や環境協力を通じて国際貢献を図ることとした。習主席も、ODAの貢献を高く評価したうえで、来年の大阪でのG20サミット(20カ国・地域首脳会議)への協力を表明した。
安全保障面では、防衛当局間の「海空連絡メカニズム」の年次会合の年内初開催を約束し、日中海上捜索・救助協定(SAR)も結んだ。防衛・海保部門の交流を進めるなど、着実な前進が図られている。
課題も残る。
東シナ海の問題については、不測の事態を避ける点では一致したものの、現状の改善策を見いだすには至らなかった。対話と交流による信頼醸成が今後重要となろう。日中平和友好条約の核心の1つである「覇権を求めず」との精神が、両国の言行一致の姿勢に現れることが大切だと思う。
現在の米中関係と日本への影響についても、不透明感が残った。
日中関係改善の背景には、「米中新冷戦」といわれるほどの米中関係悪化があるとの指摘がある。マイク・ペンス米副大統領が4日、ワシントンで行った演説は、かつてチャーチル元英首相の行った「鉄のカーテン」演説を彷彿とさせるとの声もある。
貿易摩擦を含む、こうした対抗が長引くことは、世界経済に悪影響を及ぼし、どの国も得することはない。
日本は、多角的自由貿易体制を重視するとともに、公正な貿易ルールの進展をリードする必要がある。(公明党代表)
【2018年10月31日(30日発行)夕刊フジ掲載】