原発「処理水」海洋放出 大切なのは国民の理解
2020.10.21
菅義偉政権が、東京電力福島第1原発で汚染水浄化後に残る放射性物質トリチウムを含んだ「処理水」について、海洋放出を決定する方針を固めたと報じられた。
月内にも、経産相や復興相など関係閣僚会議を開いて決定する方向だ。反原発の立場をとってきた一部の野党やメディアなどは声高に反対を叫ぶだろう。
私を含む公明党の議員が、政党として初めて福島第1原発を視察したのは2012年6月。当時も、セシウムだけを除去した汚染水を貯蔵するタンクが所狭しと並んでいた。
その後、13年から62種類の放射性物質の浄化処理ができる設備「ALPS」が稼働し、どうしても除去できないトリチウムだけを含む「ALPS処理水」を貯留するタンクが累増していった。
発電所の敷地内にタンクを設置できる場所が22年に限界を迎えることから、国の「ALPS小委員会」で「処理水」の取り扱いが検討され、廃炉作業の一環としてタンクを取り除き、その際、世界で実績のある海洋放出が選ばれようとしている。
海洋放出の人体への影響は、「原子放射線の影響に関する国連科学委員」のモデルを使って、自然界で受ける放射線の1000分の1以下になると評価されており、科学的にも問題はない。ALPS稼働前の汚染水もALPSを使って2次処理をすれば「ALPS処理水」と同等になる。
実際、トリチウムは自然界にもたくさん存在する水素の仲間であり、微弱な放射線を出すものの、人体には影響がないので、欧米や日中韓などの原発からも各国の基準に従ってトリチウム水が海洋放出されている。
大切なことは、被災地はもとより国民の理解を十分に得ることだ。特に、科学的な安全基準をクリアしても風評に苦しんできた農水産業者のことを思うと、「風評被害」対策をしっかり講じることが復興の加速につながる。
大阪「二重行政」解消へ 都構想に賛成
私は18日、「大阪都構想」をめぐる住民投票(11月1日投開票)が告示された大阪市で街頭演説を行った。東京都区部のように、大阪市を無くして4つの「特別区」に分割し、これまでの「府」と「市」の二重行政や対立を解消する制度をつくる構想に「賛成を」と訴えた。
政令指定都市と道府県の二重行政はかねてから問題視されてきた。大阪維新の会代表だった橋下徹氏からの問題提起を受け、12年8月に「大都市地域特別区設置法」を成立させて、「大阪都構想」に道を開いた。
15年の住民投票では、公明党は住民サービスの低下や住民負担に懸念があるとして反対し、結果は否決となった。
ところが、昨年の知事・市長のダブル選挙で維新候補が圧勝し、「大阪都構想」推進の民意が示された。公明党は、民意を尊重して「住民サービス維持強化」「初期費用削減」「児童相談所増設」など4つの条件を出し、維新が全て受け入れ、このたびの住民投票に臨んだ。
大阪が大都市問題解決の先駆となり、大災害や感染症に強い多極分散型国土形成のモデルとなることを期待する。
(公明党代表)
【2020年10月21日(20日発行)付 夕刊フジ掲載】