分断のしこりを残さない
2020.11.05
大阪都構想の住民投票が行われた1日、結果は反対多数で否決となった。接戦の末、約1万7000票差と、前回(2015年)の約1万票差よりやや開いたが、またしても僅差の決着であった。
大阪市民の選択の結果を厳粛に受け止めたい。私自身、大阪府本部の要請を受けて先月18日、街頭説明会で賛成の立場で訴えを重ねたが、力及ばず残念である。理解と協力をいただいた皆さまに感謝申し上げたい。
一方の論陣を張った立場で、評論家のように分析することは控えるが、あえて次のことを指摘しておきたい。
一つは、市民を真っ二つに分断した結果のしこりを残さないことである。方や「大阪市の誇りと伝統を失ってはならない」との思い。方や「大阪発展の突破口を何とかしたい」との熱意。互いの大阪への愛着を受け止め合い、前へ進みたい。
もう一つは、大阪の問題提起を全国各地が、わが地域に置き換えて生かすことである。国の法律で地方の選択を認めたが、最初の大阪の挑戦は実らなかった。しかし、政令指定都市と道府県のむだな張り合いや足並みの乱れを招かないようにする、緊密な連携が必要であることがかえって浮き彫りになった。
今回の結果が、国政における自公連立政権の枠組みに直ちに影響はないと言ってきた。今後とも、安定した自公の政権運営に揺らぎを与えてはならないとの責任感で対応していきたい。
臨時国会が召集され、菅義偉首相が国会論戦にデビューした。所信表明演説を受けた与野党の代表質問が一巡し、今週から予算委員会に舞台が移った。私も参院代表質問に臨み、新型コロナウイルスと季節性インフルエンザの同時流行対策などをただした。
一部野党は、日本学術会議会員の一部任命見送り問題を執拗(しつよう)に取り上げる。政府は引き続き国民が理解し納得できるように、丁寧に説明責任を尽くす努力を怠ってはならない。学術の英知が国民や人類のために活用されることこそあれ、政争の具にされてはならない。
国民の関心は、会議の存在意義や役割にも向けられている。予算委員会も含めて、建設的な論議を期待したい。言うまでもないが、学術は、異論や新説が発展の原動力になってきた側面がある。権限や予算を行使する政府は、基本的に寛容な姿勢が大切だ。
国会論戦の成果は、年末にかけて、来年度の税制や予算の政府与党プロセスに反映されていく。新型コロナの感染対策に万全を期し、社会経済活動を回復させるための経済対策の策定指示も近いうちに出されるだろう。
当面の焦点は第3次補正予算だ。早くも10兆円を超える規模観などが取り沙汰されているが、大切なのは、国民の安心と希望につながる中身である。
(公明党代表)
【2020年11月5日(4日発行)付 夕刊フジ掲載】