領有権問題は存在しない
2020.12.02
中国の王毅国務委員兼外相が先月来日し、24日に茂木敏充外相と、25日に菅義偉首相と会談した。
外相会談後の共同記者発表で、王氏は「日本の漁船が釣魚島(沖縄県・尖閣諸島の中国名)の周辺の敏感な水域に入っている」「われわれはやむを得ず、必要な対応をしなければならない」「引き続き自国の主権を守っていく」などと発言した。
これには、「尖閣諸島は日本の領土なのに、来日して自国の領有権を主張するとは許しがたい」「茂木氏はなぜ、その場で反論しないのか」などの批判が噴出した。
もとより日本の立場は明確だ。尖閣諸島は歴史的にも国際法的にも日本固有の領土であり、解決すべき領有権の問題はそもそも存在しない。現に有効な支配を継続しており、力による一方的な現状変更は許されない。このことは、日本政府が一貫して述べてきたことであり、今回の外相会談でも、茂木氏は明確に主張している。
さらに先日、菅首相が電話会談した、米国のジョー・バイデン前副大統領も、「尖閣諸島は日米安保条約第5条の適用範囲」との見解を示したばかりである。
王氏の「事態を複雑化させる行動を避け、意思疎通と対話を通じて適切に対処する」などの発言ぶりからすると、中国側の主張を踏まえ、かつて尖閣で緊張が高まった状況も念頭に置きながら、外相としての立場を示したものと思われる。
また、自民党の議員からは、茂木氏が隣で黙って聞いていたことを問題視する国会質問がなされた。茂木氏は「中国独自の立場に基づく主張で、全く受け入れられない」と答弁し、「わが国の立場は会談の中で明確に伝えており、わが国の漁船への接近なども取り上げながら、強い懸念を伝え、こうした行動をとらないよう強く申し入れた」などと強調した。
日中両国が国際社会のなかで果たすべき役割や責任の大局を踏まえつつ、わが国は冷静かつ毅然(きぜん)と対応すべきである。
自治体との緊密連携が重要
新型コロナの感染者が、かつてない高い水準で増加傾向にある。こうした変化を受けて、政府はコロナ対策分科会の専門家提言を踏まえながら、年末年始を控えて「この3週間が正念場」として、これまでの対応を見直した。
東京都や大阪府、愛知県などで飲食店の時短要請が決まり、人々の接触を減らして医療崩壊防止につながる措置をとった。政府の医療体制整備の遅れを指摘する声も出ている。
一方で、年末のかき入れ時の時短要請は、業績回復の機運を削ぎ、日本経済をさらに冷え込ませる可能性も懸念されている。
感染状況の変化に、臨機応変に対応し周知を図るスピード感が求められる。試行錯誤しながらも、国全体の施策の責任を担う政府と地域の実情を知る自治体が緊密に連携しながら、国民生活を守らなければならない。
(公明党代表)
【2020年12月2日(1日発行)付 夕刊フジ掲載】