優先するべきはコロナ対策
2021.02.17
先週13日深夜、福島県沖を震源とするマグニチュード7・3、最大震度6強の地震が、福島県や宮城県などの東北と関東を中心に広く襲った。被災された皆さまに心からお見舞いを申し上げる。
東日本大震災の余震といわれている。あれから10年が過ぎようとするとき、「風化」も語られるなかで、なお予断を許さず警戒を怠れないと自らに言い聞かせた。
その折も折、東京五輪・パラリンピック組織委員会に激震が走った。森喜朗会長は12日開かれた理事会、評議員会の合同懇談会で、いわゆる「女性蔑視」発言をめぐり会長辞任を表明した。
ことの発端は、3日の評議員会で「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」といった発言だ。これ自体、前後の言いぶりを含めても、真意が分かりにくく、誤解を生みやすく、不適切と言わざるを得ない。
翌4日の記者会見で、森会長は発言を謝罪し撤回したが、そのときの対応がさらに国内外の批判を拡大し、国際オリンピック委員会(IOC)も「不適切」声明を出し、ボランティア参加者からも辞退が続いた。
もちろん、不適切な発言で辞任表明したとしても、森会長の功績が全否定されるわけではない。東京五輪・パラリンピックの招致段階から関わり、組織委員会会長として国内外の調整などで難題を乗り越え、尽力してきた。ラグビーワールドカップ2019を成功に導いたことも記憶に新しい。しかし、「物言えば唇寒し…」の感もある。
この発言をめぐる、一部野党の批判はチグハグだ。
会長の任免は組織委員会の権限であり、菅義偉首相には任命権がない。にもかかわらず、「首相は辞任を迫るべきだ」と批判していた。任命権のある日本学術会議の会員については、「関与するな」と言っていたはずなのにである。
今、国民の一番の心配ごとは、新型コロナ対策である。それをさておいて、批判のための批判一辺倒では、国民の共感は得られまい。
森会長が辞意を周囲に伝えたとの報道と同時に聞こえてきたのが、後任に組織委員会の評議員である日本サッカー協会元会長の川淵三郎氏を要請したとの報である。川淵氏は取材に一旦は受諾の意向を示したが、「密室」批判を浴びて、その後、要請を辞退すると明言した。
後任の会長決定については、各方面から「透明な手続き」が求められ、12日夜、組織委員会の武藤敏郎事務総長は「透明性を高めるため、アスリートを中心とした選考委員会を設置した」と述べた。
後任会長が誰であれ、コロナ禍のなか、半年後に迫った東京五輪・パラリンピックを成功させる重い責任を背負った船出となる。「復興五輪」として本年開催の意義を踏まえれば、困難を乗り越えてこその開催が大きな希望につながる。
(公明党代表)
【2021年2月17日(16日発行)付 夕刊フジ掲載】