東日本大震災から10年 心の復興、人間の復興を成し遂げる
2021.03.17
先週11日、地震と津波、原発事故という3つの大規模災害が連続発生した東日本大震災から10年が経過した。改めて犠牲となられた方々と、ご遺族に心からの哀悼の意を表するとともに、すべての被災者にお見舞いを申し上げる。
岩手、宮城両県では、住まいの再建、復興のまちづくり、主要な道路などハード面はほぼ整備された。なお、4万人余りの人々が避難生活を余儀なくされており、これからは、コミュニティーの再形成や心のケアなど、1人ひとりの状況に応じたきめ細かな支援が必要となる。
福島県の復興は緒に就いたばかりである。東京電力福島第1原発事故からの本格的復興は中長期的な取り組みが不可欠だ。国が前面に立って、廃炉や、汚染水浄化後の「処理水」対策に道筋をつけるとともに、住民の帰還と交流人口の拡大を進めていくことが重要だ。
明るい希望は、再生可能エネルギーやロボット産業の集積を進める「福島イノベーションコースト構想」だ。わが国が目指す「脱炭素社会」や「デジタル社会」の構築と軌を一にする。合わせて、研究開発と人材育成の推進力と期待される「国際教育研究拠点」の実現にも力を注ぎたい。
この10年間は、仙台での国連防災世界会議で確認された「より良い復興」の考え方と、「防災・減災・復興を政治や社会の主流に」とのトレンドを生み出した。風化と風評という2つの風と闘いながら、心の復興、人間の復興を成し遂げるまで寄り添い続けたい。
「自由で開かれたインド太平洋」構想の実現を
ジョー・バイデン米大統領の呼びかけで12日夜、日本と米国、オーストラリア、インドによる戦略的枠組み「QUAD(クアッド)」による初めての首脳会合がオンラインで開催された。
「自由で開かれたインド太平洋」構想の実現に向けて、協力を強化することをはじめ、新型コロナウイルスのワクチン供給、次世代通信規格など重要・新興技術、気候変動対応の3つの作業部会を立ち上げ、年内に対面会議をすることなどで合意した。
クアッドはもともと、2004年のスマトラ沖大地震・大津波への4カ国チームの支援を機に、当時の安倍晋三首相が06年、戦略対話の枠組みとして提唱したことがきっかけである。当初は、中国の反発から、オーストラリアやインドに消極的な態度もみられた。
このところ、中国との間で、インドは国境紛争、オーストラリアは貿易摩擦、日本は東シナ海問題に直面していることが、中国を最大の競争相手と見る米国の呼びかけに応じる背景となっている。
菅義偉首相は、16日開催の日米の外務、防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)を経て、4月前半に訪米し、バイデン大統領が対面する初の外国首脳として会談に臨むことになる。まず、2人の信頼関係を深め、日米同盟を強化し、国際協調の指導的役割を確認してもらいたい。
(公明党代表)
【2021年3月17日(16日発行)付 夕刊フジ掲載】