システムの完璧さ求め遅れれば本末転倒
2021.05.26
政府が東京と大阪に設置した新型コロナワクチンの大規模接種センターが、24日から自衛隊の運営によってスタートした。自衛隊は、本来の「国防」という重要な任務があるなか、「国難」ともいうべきコロナ禍を受けて、医官や看護官が活動する。
インターネットによる予約のみだが、第1回の予約受付は、両会場とも初日で1週間分の接種枠が埋まってしまう状況であり、対象となる高齢者の関心の高さがうかがわれる。
接種は、初日から混乱なく順調に進み出した。円滑で迅速な大規模接種が期待できそうだ。私も25日、会場を視察する。自衛官をはじめ民間の看護師さんや運営スタッフの連携のとれた仕事ぶりを確認したい。
感染拡大をくい止めるためには、ワクチン接種回数の総量を増やして、早く行き渡らせることが重要である。2大都市および周辺の人々が大規模接種センターを利用した分だけ、市区町村での接種が減り、予約が前倒しされて、次の一般接種が早まることにつながる。
東京と大阪の大規模接種センターが、遅れ気味だった自治体接種にも影響したのだろうか。医師会の方々の協力が進み、接種予約枠が一気に拡大されることになった地域や、宮城県や群馬県、愛知県など大規模接種会場を設置する県も出てきた。全国の動きを加速する鍵は、何と言っても地域医師会や都道府県立病院の医師の方々の協力だろう。
自衛隊の大規模接種センターの予約システムをめぐり、毎日新聞と朝日新聞出版が運営するニュースサイト「アエラドット」が架空の接種券番号で予約できるか検証して報道したことに、岸信夫防衛相らが「悪質な行為」などと厳重抗議した。
この緊急事態に、ワクチンを待ち望む国民に一刻も早く接種できるようにすることが急務である。接種の意思がない人が架空の番号を入力しても予約ができたと騒ぐことが国民に歓迎されるだろうか。
接種券と本人確認書類がなければ実際に接種できないのだから、架空予約をする意味がない。架空予約を予想して時間を懸けて完璧なシステムをつくり、接種が遅れれば本末転倒だ。
接種したい人が指示どおり入力すれば問題なく予約ができている。うっかり入力を誤った人が、正しくやり直せるよう改善することは必要だ。
念のため、予約サイトでは「迷惑行為はしないでください」と協力を呼びかけ、過ぎれば偽計業務妨害罪になり得ると警告している。
厚労省は21日、米モデルナ製と英アストラゼネカ製の新型コロナワクチンを「特例承認」した。大規模接種センターでは、モデルナ製を使うことになっており、タイミングを合わせたような承認である。
国民からは遅いとの声があがり、外国人からは承認に時間がかかりすぎると問われる。薬害と訴訟リスクに慎重な「平時」の姿勢でいいのかとの批判もある。
公明党は先月28日、国産ワクチンの開発基盤整備と大規模最終治験のあり方など早期承認制度に向けての取組を政府に提言した。
「医療の安全保障」が問われている。
(公明党代表)
【2021年5月26日(25日発行)付 夕刊フジ掲載】