パラリンピック から「勇気と感動」を実感
2021.09.01
東京パラリンピックの熱戦が続いている。人々の関心も日に日に高まっているようだ。東京五輪もかなり盛り上がったが、パラリンピックは違う意味で「勇気や感動を与えてくれる」と実感する。
五輪とはひと味違った競技が、新鮮な驚きとなる。車いすラグビーは、実に迫力がある。パス回しと相手をブロックするチームワークが決め手となる。ボッチャは、障害の重さにかかわらず、老若男女誰でも一緒に楽しめる「ユニバーサルスポーツ」と言われるが、緻密な頭脳プレーの個人技が光る。
パラリンピックは多様性の象徴でもある。障害の種類や程度に応じてクラスを分け、公平な競争条件をつくる。どこかの機能が失われていても、残っている機能で競技ができる。特別な器具で補えば、新たな能力を生かすことさえできるのだ。
パラアスリートは失望感や挫折感を味わった人が多い。しかし、どこかで気持ちを切り替え、きっかけをつかみ、並々ならぬ努力を積み重ねて、新たな自分にたどり着いている。
以前、日本パラリンピアンズ協会理事の田口亜希さんと対談した。客船「飛鳥」のパーサーとして世界をめぐっていたが、突然歩けなくなり車いす生活になった。失意の底からはい上がり、射撃選手としてアテネからロンドンまで3大会に連続出場した。
田口さんは「障害者になり、スポーツをして初めて、見返りなしで人のために行動する人の多さに気付きました」と、支えてくれた人々への感謝を語った。
人生の幾多の障害を乗り越えて素晴らしいプレーをする姿に、健常者も「自分たちも頑張らなければ」と奮起させられる。学校連携プログラムで観戦できた子供たちには、またとない学びのチャンスになった。
菅義偉首相の地元・横浜市で行われた市長選は、首相が全面支援した小此木八郎候補が大差で敗れる結果となった。出口調査によれば、公明党は自主投票としたものの、支持層の7割は小此木候補に投票したと報道されており、残念である。
争点の1つとなったカジノを含む統合型リゾート施設(IR)をめぐって、推進の旗頭であった菅首相が反対を表明した小此木候補を推したため、賛成派の前市長・林候補を推す保守系と分裂選挙となり、支持層を結集できなかった。
有権者の最大の関心は、新型コロナ対策であった。デルタ株による感染急拡大が内閣支持率を下げる要因となり、そのまま小此木陣営の勢いを削いだ。
結局、「カジノ反対」では差別化できず、政府のコロナ対策を批判し、「コロナ専門家」を売り込む野党系候補が無党派層を引き付け、票差が開いた。
この結果は、政権運営に直ちに影響するわけではないが、真摯(しんし)に受け止めるべきだ。日程が発表された自民党総裁選を見守りつつ、政府与党が結束して新型コロナ対策に最大限努力しなければならない。
(公明党代表)
【2021年9月1日(8月31日発行) 夕刊フジ掲載】