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ブログ「本音でズバッと」

菅首相 総裁選不出馬に驚いた

2021.09.15

菅義偉首相は3日、自民党総裁選への不出馬を表明した。実は前日、昼食をともにしながら懇談した折は、そんな素振りはまったく感じられなかった。現に、前日の夕刻には、自民党本部に二階俊博幹事長を訪ね、総裁選立候補の意思を伝えたと報道されていた。「不出馬」の知らせを聞いて、大変驚いた。

現職の首相が、その地位の前提となっている総裁選について、なぜ一夜にして方向転換する決断に至ったのか、あれこれ想像の域を出ない。

菅首相自身は、現下の最優先課題である新型コロナウイルス対策と、総裁選候補としての活動は莫大(ばくだい)なエネルギーを必要とするので、両立はできない。河野太郎行革担当相は総裁選候補に押し出すが、自らは、新型コロナ対策に専念する責任を全うすると語るのみだ。

ある意味で、潔い決断だ。

昨年9月に発足した菅内閣は約1年で終わる。当初から「新型コロナ対策を最優先」に掲げ、何度も襲ってくる感染の波に対し、試行錯誤を繰り返しながら対策に邁進(まいしん)してきた。

緊急事態宣言などを月末まで延長したばかりであり、まだ油断はできない。ワクチン接種の進捗(しんちょく)とともに感染者が減り始めており、重症者を減らし医療提供体制を整えることが目標だ。

タイプの異なる候補が並び、盛り上がりをみせる自民党総裁選だが、「次の総裁」が決まるころには、出口が見えてくるかもしれない。

菅政権は、切り札となるワクチン接種を65歳以上の高齢者優先で進め、7月末までに2回目の接種を終えた人は約8割に達した。接種開始当初は、一日当たり60万回程度との予測だったが、菅首相は「1日100万回を目指す」と宣言し、6月には100万回を超え、7月には150万回の水準に届いた。

厚労省は8日、ワクチン接種によって、高齢者の感染を7~8月に10万人、死亡者を8000人減らしたとの試算を提示した。

デルタ株が猛威を振るい、感染者数は8月上旬に若い世代を中心に急増したが、一人の感染者が何人に感染を広げるかの目安となる「実効再生産数」は、東京、大阪ともに7月31日の1・74をピークに減り始め、すでに1・0を切っている。

菅首相は3日夕刻、私に電話をくれた。総裁選不出馬と謝意を述べた後、「ギリギリでした」と語った。私は、何がギリギリだったのかを問い返さなかったが、高齢者優先のワクチン接種でデルタ株による感染の猛威からギリギリ抜け出すことが出来たことを伝えたかったのかもしれない。

振り返ってみれば、この1年で菅内閣は、多数の実績を残している。

惜しむらくは控えめなアピール力である。「携帯料金の引き下げ」「不妊治療の保険適用」「公立小学校35人学級実現」「2050年カーボンニュートラル宣言」「デジタル庁設置」「福島原発の処理水海洋放出決定」「東京五輪・パラリンピック開催」など、「仕事師内閣」の面目躍如と後日評価されるに違いない。

菅首相!お疲れ様でした。バトンを渡すまで一緒に頑張りましょう。

(公明党代表)

【2021年9月15日(14日発行)付 夕刊フジ掲載】