北京五輪開催 目立つ政治色
2022.02.09
北京冬季五輪が4日開幕した。開会式は北京市内の「鳥の巣」と呼ばれる2008年夏季五輪のメインスタジアム(国家体育場)で開催された。
14年前は圧倒的な力を誇示するような演出だったが、今回は対照的だった。選手団入場で掲げた国名を記した雪の結晶型のプラカードを集めて大きな結晶を描き、中央に聖火トーチを据えて聖火台に見立てる繊細なパフォーマンスは意外だった。子供の合唱団を繰り出すなど、コロナ禍で迎えた内外の状況をかなり意識した対応になっていた。
日本人選手は、男子モーグルの堀島行真選手が銅メダルを獲得したのを皮切りに、スキージャンプ男子ノーマルヒルで小林陵侑選手が見事金メダルに輝いた。スキージャンプでは、長野五輪以来、24年ぶりの快挙である。フィギュア団体では、初の銅メダルをたぐり寄せた。
今回の五輪は、中国国内の人権状況なども問題視され、自由主義諸国は政府代表を派遣しないいわゆる「外交的ボイコット」を行った。
一方、権威主義国側は、中国の習近平国家主席が、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領を招いて首脳会談を行い、「NATO(北大西洋条約機構)のさらなる拡大に反対する」との共同声明を発表した。政治色の目立つ大会になった。
新型コロナウイルスの国内新規感染者がついに10万人を超えた。感染爆発ともいえる数であるが、切り札となるワクチンの「3回目接種」にスピード感がない。
私は記者会見で2点訴えた。
まず、1日当たりの接種回数を増やすこと。国が設けた自衛隊の大規模接種センターの回数不足を訴え、東京、大阪とも大幅に拡充されて昨年並みのペースになった。
次に、モデルナの交互接種へのためらいをなくすこと。3回目接種は、副反応を抑えるために2回目までの半量とすることに関し、東京都狛江市の例を挙げて明快な広報を求めた。
他国では、2回目から3回目までの接種期間をどんどん短縮している。日本も当初8カ月間から自衛隊大規模接種センターでは6カ月間に短縮したが、自治体では7カ月間のまま実施するなど足並みがそろっていない。
岸田文雄首相は7日、これまで数値目標を示すことを避けてきた姿勢を転換し、「一日当たり100万回」を2月中のできるだけ早い時期に達成するよう関係閣僚に指示した。職域接種、地域接種が混乱なく加速できるように、政府は丁寧に協力と支援を徹底する必要がある。
石原慎太郎氏が1日亡くなった。作家としても、国会議員としても、東京都知事としても、独自の存在感を発揮した。最も印象深いのは、都知事時代の2002年9月、記者会見でペットボトルに入った煤(すす)を振りまき、粒子状物質排出基準違反のディーゼル車を一掃するとキャンペーンを始めたことだ。
これが、国や隣県、首都高やメーカーなどを巻き込んで功を奏し、07年8月、東京大気汚染訴訟の全面和解につながった。
亡くなる1週間前までワープロに向かって原稿を書いていたそうである。作家として生涯現役を全うしたことを長男の石原伸晃氏から伺った。心からご冥福をお祈りします。
(公明党代表)
【2022年2月9日(8日発行)付 夕刊フジ掲載】