ウクライナ侵攻は明白な国際法違反
2022.03.09
ロシアによるウクライナ侵攻は先月24日に始まり、国際世論の猛烈な反対にもかかわらず続いている。ロシアは身勝手な理屈を立てて、ウクライナの主権と領土を踏みにじっている。このような、一方的な「力による現状変更」は、アジアを含む国際秩序の根幹を揺るがすものであり、明白な国際法違反として厳しく非難しなければならない。
ウラジミール・プーチン大統領は当初、軍の基地や施設への攻撃を主張していたが、実際には、病院や学校、住宅など非軍事施設への砲撃も行っており、民間人に多数の犠牲者が出ている。これらの実情は、国際人道支援機関や外国の報道機関の映像などからも裏付けられ、「戦争犯罪」に近いものと思われる。
国連は、安全保障理事会での「対露非難決議案」をロシアが拒否権を行使して否決された後、緊急特別総会で「即時の無条件撤退を求める決議案」を、賛成141カ国という圧倒的多数で採択した。
だが、プーチン氏は聞く耳を持たない。
あろうことか、「抑止力の緊急警戒態勢」と称し、核兵器による威嚇まで示唆した。これは、国連安保理常任理事国であり、NPT(核軍縮不拡散)条約で認められた核兵器保有国に課せられた「平和への責任」と矛盾する暴挙であり、唯一の戦争被爆国である日本としては断固抗議しなければならない。
さらに、原子力発電所や核研究施設まで攻撃したことは、旧ソ連時代に起きたチェルノブイリ原発事故や、東日本大震災で起きた福島第1原発事故の深刻な被害を省みない、極めて危険な行為である。
G7(先進7カ国)をはじめとする国際社会は、結束して制裁措置を発動し、プーチン氏の個人資産凍結、国際行事への参加禁止、国際決済ネットワーク「国際銀行間通信協会(SWIFT)」からの排除など、段階的に強化している。
危険を回避しようと、ポーランドなどの隣接国に100万人をはるかに超えるウクライナ難民が流出しており、NATO(北大西洋条約機構)諸国や、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)などが人道支援にあたっている。
日本も、緊急人道支援として国際機関経由で1億ドル(約115億円)拠出と、ウクライナからの避難民受け入れを表明した。
また、ウクライナの国防大臣の依頼を受けて、防弾チョッキやヘルメットなどの装備品を近く提供する。国際秩序の根幹を揺るがす侵略に対し、国際的な平和と安全の維持に役立つことから、防衛装備移転3原則の範囲内で運用指針を改定し、人の生命身体を守るものに限って提供するものである。
制裁措置の影響は、日本にも及んでくる。原油や天然ガスの価格上昇が、コロナ明けの供給不足ですでに生じている物価高に追い打ちをかけるおそれがある。国民生活を守る対応が求められる。
欧州で既存の安全保障の仕組みが機能せず、この21世紀に「まさか!」の侵略が起きてしまったと世界中が思う今、「外交・安全保障」「防衛」「エネルギー」などの諸政策を問い直す機会である。
(公明党代表)
【2022年3月9日(8日発行)付 夕刊フジ掲載】