日銀短観悪化 新たな経済対策を実行する
2022.04.06
日銀が1日発表した3月の「短観」(企業短期経済観測調査)は、1年9カ月(7四半期)ぶりに悪化した。
最近の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業製造業で昨年12月の前回調査から3ポイント下落し、プラス14となった。先行きについては、製造業・非製造業ともさらなる悪化を見込んでいる。
ロシアによるウクライナ侵略などを受けた原油などの価格高騰や新型コロナウイルスのオミクロン株による感染拡大で消費が停滞したことなどが影響したようだ。
すでに石油関連商品や食料品など、4月から7月まで値上げ予告がめじろ押しである。これは、ウクライナ侵略前の要因が主であり、エネルギー、穀物、希少資源に関する侵略後の影響はむしろこれからである。加えて、「円安」傾向が追い打ちを掛ける。
公明党は、急激な物価高から国民生活を守るために、先月28日に岸田文雄首相に対し、「緊急提言」を行い、新たな経済対策とそれを実行するための補正予算の編成を求めた。
岸田首相は翌日、関係閣僚に対し、4月末までに経済対策の策定を指示し、そのための財源として、まず新年度予算の「予備費」5000億円と「コロナ対応予備費」5兆円を優先して当てることを明らかにした。
もちろん、緊急の必要があれば、4月末まで待たずとも「予備費」を活用することはあり得る。しかし、その先は岸田首相が私との党首会談でも確認したように、「ウクライナをめぐる事態の展開次第では、世界と日本が戦後最大の危機を迎える」かもしれない。
事態の展開が不透明であり、コロナの「第7波」の懸念や梅雨時の災害の恐れを視野に入れ、参院選と国会再開までの政治空白を考えると、補正予算を今国会中に成立させて、憂いなく、切れ目なく対応できるようにしておくことが重要である。
ロシアのウクライナ侵略は、長期化の様相を見せてきた。ロシア側の当初の見込みが外れたため、首都キーウ(キエフ)周辺から軍部隊を移動させ、東南部の制圧に重点を置き始めたようだ。南東部アゾフ海沿岸のマリウポリなどは民間人の甚大な犠牲者が出て、完全制圧の可能性も指摘される。
西側諸国はロシアの国際法違反の侵略を批判し、キーウ周辺からの移動後明らかになったロシア軍の非道な住民虐殺行為に、一層の非難を浴びせた。ただ、ウラジーミル・プーチン大統領には簡単に通じそうもない。
制裁強化が叫ばれる中で、日本が「サハリン2」から撤退しないことは、結果的にロシアの侵略戦争に手を貸すことにならないかとの声もある。岸田首相は、天然ガス安定供給確保のために撤退しないと明言した。
日本が撤退しても、中国が置き換わるだけで制裁の効果はないとみており、岸田首相はG7(先進7カ国)首脳会談の折、日本の立場に理解を求めたようだ。
ロシアと北方で接する日本に安全保障の難題が加わった。
(公明党代表)
【2022年4月6日(5日発行)付 夕刊フジ掲載】