露軍の「戦争犯罪」疑惑 ICCの本格捜査に期待
2022.04.20
ロシア軍が撤退したウクライナの首都キーウ(キエフ)近郊のブチャなどで、ロシア軍による市民への残虐行為が報じられている。欧米各国とともに岸田文雄首相も7日、「市民を殺害することは戦争犯罪」と非難した。
先週末の朝日新聞の世論調査では、岸田首相のこの発言を支持した人は88%にのぼった。後ろ手に縛られたまま殺害されたとみられる人、自転車に乗ったまま撃たれて殺害されたとみられる人、誰しも、この映像に憤りと悲しみを募らせたに違いない。
日本政府は9日、ウクライナの事態を国際刑事裁判所(ICC)に付託し、13日から、カリム・カーン主任検察官が「戦争犯罪」や「人道に対する罪」の本格的捜査に乗り出している。
国際社会が見つめる中で、ロシア側の「フェイク」との言い逃れや証拠隠滅行為を正し、衛星写真や映像や証言で戦争犯罪を証明していくことが、圧倒的な国際世論を形成し、ロシア軍の暴挙を止めさせることにつながる。
日本の安全保障環境が厳しくなるなか、自衛隊を違憲として位置づけ、党綱領に「自衛隊解消」「日米安保廃棄」を掲げる日本共産党の志位和夫委員長が7日の党会合で、「万が一、急迫不正の主権侵害が起こった場合は、自衛隊を含むあらゆる手段を行使して、国民の命と日本の主権を守り抜く」と語った。
この発言に対し、日本維新の会の馬場伸幸共同代表は「自衛隊は党綱領で違憲と虐げつつ、都合のいい時だけ自衛隊に頼るとはあきれる」と批判している。参院選を意識した「究極のご都合主義」と言われても仕方ない。「自衛隊の解消」を掲げながら、命がけで隊員を働かせるとは、自衛官を侮辱するようにも聞こえる。
2016年の参院選期間中、日本共産党の政策責任者が日本の防衛費を「人を殺すための予算」と発言し、大批判を浴びて撤回に追い込まれたことは記憶に新しい。
参院選を前に、野党共闘や党首討論のために、党綱領と現実対応の矛盾を言い繕ってみても、言葉面と本音のギャップは解消しきれていないのではないか。
「文書通信交通滞在費」について、日割り支給や名称変更に関する国会法などの改正案が、15日の参院本会議で与野党の賛成多数で可決、成立した。年初から始まった与野党協議の成果を、24日投開票の参院石川県選挙区補欠選挙の当選者に、与野党の合意できた部分から適用できるようにするためである。
核心は、「使途の範囲」「使途公開のあり方」「未使用分の国庫返納」であり、今国会中に結論を出さなくてはならない。使途の範囲や公開が明確になれば、名称変更はごまかしとの非難を免れ、早く合意を作ることで先送りの疑念も消える。与野党の覚悟が問われる。
(公明党代表)
【2022年4月20日(19日発行)付 夕刊フジ掲載】