日中首脳初の対面会談「有事を招かない行動」期待
2022.11.23
岸田文雄首相は11日から19日まで、カンボジアで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議と、インドネシアで開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議、タイでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に参加したうえ、日米韓首脳会議や日韓首脳会談、日中首脳会談などをこなして帰国した。
特に、3年ぶりとなる日韓、日中の二国間首脳会談が注目された。
日韓首脳会談は、北朝鮮の弾道ミサイル発射を非難し、国連安保理決議に沿って非核化に向けての協力を確認し、「自由で開かれたインド太平洋」の追求の取り組み連携で合意した。いわゆる「元徴用工」問題については懸案の早期解決を図ることで一致した。
ところが、韓国国防省は会談後、2018年の海上自衛隊の哨戒機へのレーダー照射事件を否定し、前政権時の主張を踏襲した。客観的な事実からは説得力を欠くが、尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権のもとで、先日の海上自衛隊「国際観艦式」に韓国艦が参加したこともあり、再発防止に日韓の意思疎通を図ることが大切だ。
日中首脳会談では、習近平国家主席は岸田首相と初の対面会談に笑顔で臨んだ。岸田首相は「日中関係は協力の可能性と課題や懸案にも直面している」としたうえで、「建設的かつ安定的な日中関係の構築を加速していくことが重要だ」と述べた。習氏は「日中は、幅広い共通利益や協力の余地があり、その重要性は変わらない。新時代の要請にふさわしい関係を築いていきたい」と語った。
また、岸田首相は中国による沖縄県・尖閣諸島周辺での活動や弾道ミサイル発射など軍事的な活動について「深刻な懸念」を表明し、「台湾海峡の平和と安定の重要性」を強調した。習氏は台湾問題に関し、「いかなる理由があろうとも中国への内政干渉は認めない」と述べたうえで、海洋や領土の争いについては「政治的な知恵を出し、意見の相違を適切にコントロールする必要がある」と語った。
有事を招かない両首脳の決意がかみ合うことを期待したが、それぞれの立場での主張が交錯しているようだ。
一方、会談では、日中防衛当局間の海空連絡メカニズムの下でのホットラインの早期運用開始、日中安保対話等による意思疎通の強化で一致したという。これらを実行することで、防衛力強化とバランスをとりながら、有事を招かない行動を期待したい。
内政は帰国後、急展開した。「政治とカネ」の問題が続出していた寺田稔総務相が20日に辞表を提出したことを受け、岸田首相は翌21日、後任に松本剛明衆院議員を任命した。
これを受けて、昼過ぎ、自公党首会談を行った。岸田首相は、外交の成果を報告するとともに、3人目の閣僚辞任と国会運営への影響を陳謝し、与党の協力を求めた。
私は、任命権者としての厳しい反省のうえで、内閣の態勢立て直しと政府与党の結束の必要性を述べた。それでこそ、外交の成果が生かされると加えた。
(公明党代表)
【2022年11月23日(22日発行)付 夕刊フジ掲載】