岸田首相「防衛費5年間で43兆円」指示 政府与党、国民の理解を得る努力を
2022.12.07
サッカーのワールドカップ(W杯)カタール大会で、日本代表は2大会連続で1次リーグを突破した。このコラムが出るころには、私を含む日本サポーターが応援した決勝トーナメント1回戦のクロアチア戦(日本時間6日未明)は終わっている。
森保一監督は試合前、「新しい景色」を見たいと抱負を述べ、選手たちも「歴史を変える」と意気込んでいた。
ただ、私は1次リーグですでに、「新しい歴史を刻んだ」と思っている。何と言っても優勝経験のある強豪のドイツとスペインを破って、堂々と勝ち点6を挙げ、E組首位で16強入りしたのだ。
選手の活躍ぶりも印象深い。堂安律選手は、ドイツ戦とスペイン戦で強烈なシュートを相手ゴールに突き刺した。スペイン戦でのシュートスピードは1次リーグ中2位と、並みいる名選手の上をゆく。
スペイン戦の2点目は、三苫薫選手のクロスボールを、飛び込んできた田中碧選手がゴールへ押し込んだものだった。見る位置によって三苫選手のボールはゴールラインを割ったようにも見えた。VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)判定で真上から見ると、ボールの縁がラインにわずかに被っており、ゴールが認められた。
最後まで諦めない執念のプレーである。ボール支配率16%しかなかった日本が、わずかなチャンスをものにした。スピード感とメンタル、フィジカルの強さを身につけてきた結果といえる。
三苫、田中両選手は、川崎市の鷺沼地区で子どもの頃から同じサッカークラブで育ったことから〝鷺沼兄弟〟と呼ばれる名コンビだ。日本中の子どもたちに勇気と希望を与えたに違いない。
日本人サポーターが試合後、観客席を掃除するマナーは今回も見られた。定着した観があるが、外国のサポーターにも追随する動きが広がったことが新たな歴史といえよう。
森保監督の、選手に自信を持たせ、前半を守りでしのぎ、後半に選手を入れ替えて一気にハイプレスで勝負をかける采配ぶりが功を奏した。かつて自身が選手として味わった「ドーハの悲劇」を、「ドーハの歓喜」に変えた手腕を称えたい。
さて、岸田文雄首相は5日、今後の防衛装備品などの経費額を示す「防衛力整備計画」をめぐり、2023年度から「5年間の総額を約43兆円を確保する方向で与党と調整する」と、鈴木俊一財務相と浜田靖一防衛相を官邸に呼んで指示したという。
日本を取り巻く安全保障環境が悪化するなか、国民の不安に応え、生命と財産を守るためには、防衛力の抜本的な強化が必要との立場で、議論が重ねられてきた。防衛省は48兆円が必要と主張し、財務省は30兆円台半ばを唱えていた。
岸田首相は先月28日、鈴木、浜田両大臣に補完的な取り組みを合わせた総合的な防衛費を、2027年度に現在の「GDP(国内総生産)比2%程度」に増額するよう指示していた。
歳入歳出両面での財源確保措置の裏付けが必要なので、岸田首相は「与党と協議を進めて政治決着を図る」としている。
国民の理解を得られる努力が、政府与党に求められる。
(公明党代表)
【2022年12月7日(6日発行)付 夕刊フジ掲載】