本物の未来志向の日韓関係を
2023.03.23
韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が16、17日に来日し、日韓間の懸案解決に向けて大きな一歩をしるした。岸田文雄首相との首脳会談(16日)では、日韓関係をさらに発展させ、交流や協力を加速化させていくことを確認した。
いわゆる「徴用工」訴訟問題では、韓国側が提示した解決策を日本側も評価した。韓国側は「求償権」の行使は想定しないとして、未来志向の健全な関係に戻していく土台になるとした。
日本政府は、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいると表明し、両国の経済団体が未来志向の日韓協力・交流のための基金を創設する。
日韓両首脳は、形式にとらわれず頻繁に往来する「シャトル外交」を再開することでも一致した。岸田首相も訪韓を検討し、今年5月に広島で開催されるG7(先進7カ国)首脳会議に尹大統領を招待する方向で調整する。
また、日韓、日韓米で安全保障協力を推進する重要性を確認するとともに、日韓の安全保障対話を再開し、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を安定的に運用していくことも合意した。
さらに、経済安全保障の協議を立ち上げることとし、併せて、日本が半導体の原材料など輸出管理を厳格にしていた措置を元の優遇対象に戻し、韓国もWTO(世界貿易機関)提訴の手続きを停止することとした。
こうして、尹大統領の訪日を機に、日韓双方が「魚心あれば水心あり」ともいうべき呼応をみせて、日韓関係の改善・発展の基礎が造られた。
とはいえ、具体的に未来を築くのはこれからである。求償権行使を想定しないといっても、韓国の政権が替わって蒸し返すことはないという法的保証はない。
尹大統領の訪日日程の締めくくりは公明党との会談となった。私は石井啓一幹事長、古屋範子副代表とともに会談に臨んだ。尹大統領は実に晴れやかな表情であった。
私は「日韓関係を安定的に発展させるためには、国民双方の間を近づけることがなによりです」と述べ、そのために、文化・芸術、観光、スポーツなどを通じて交流を盛んにすることを提案した。
現に、昨年末の訪韓のときに話題となったクラシックバレエの交流や、大阪・関西万博への参加などで尹大統領は早速に指導力を示した。今回の会談では、若い世代や女性の交流拡大も話題になった。
マスコミ各社世論調査では日韓関係改善に期待感が示され、国際世論も歓迎している。本物の未来志向につなげたい。
さて、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は22日朝(日本時間)、いよいよ米国で決勝戦を迎える。この原稿は20日に書いており、準決勝(21日)以降の結果は分からない。
ただ、日本代表「侍ジャパン」の快進撃は、現時点でも素晴らしい。大リーグで活躍する「二刀流」の大谷翔平投手をはじめ、ダルビッシュ有投手、ムードメーカーのラーズ・ヌートバー選手、吉田正尚選手、日本で活躍する佐々木朗希投手、当たりが戻ってきた「三冠王」の村上宗隆選手など、それぞれがチームの勝利のために貢献していた。日本人だけでなく、世界の人々の心に大切なものを残したのではないか。
(公明党代表)
【2023年3月23日(22日発行)付 夕刊フジ掲載】