広島G7サミットは成功 ロシアの核兵器使用を阻止
2023.05.24
19日から3日間に及んだ「広島G7サミット(先進7カ国首脳会議)」が21日、閉幕した。近年、これほど世界の注目を浴びたサミットはなかったのではないか。何しろ、開催地が「広島」と言うだけで、内外の耳目を引きつける。議長国の日本が首相の出身地で開催するのも初めてである。
ウクライナを侵略したロシアが「核兵器の使用や威嚇」をちらつかせるなかで、これを阻止するために、被爆地・広島から発信するまたとない機会だった。そこに、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の電撃訪日によって一気に盛り上がった。
前回の連載で期待した3点は、ほぼ達成された。
岸田文雄首相は、G7首脳を迎えて、平和記念資料館で展示を説明し、被爆者の代表が語りかけた。慰霊碑に移り、それぞれが献花し、黙禱(もくとう)をささげた。さらに、平和公園の一角で一本の桜の苗木に皆で土を盛って心を合わせた。
被爆の実相に触れ、「核兵器のない世界」に向かう決意を共有する見事な運びである。
これらの機会は、「グローバルサウス」と呼ばれる新興国・途上国の代表格、インドのナレンドラ・モディ首相をはじめ8つの招待国の首脳やゼレンスキー大統領とも共有した。2国間で個別にこのような機会を調整するのは事実上困難であり、一度に実現したことの意義は大きい。
首脳声明では、「すべての者にとっての安全が損なわれない形で」核兵器のない世界に向けて、核軍縮・不拡散の取り組みを強化することを表明した。ロシアや中国を含めてリスクを減らしていく政策に至る奥行きを感じとれる。
また、ウクライナに対する必要とされる限りの支援と、ロシアへの制裁を強化するとともに、「法の支配」に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜く決意を、ゼレンスキー大統領の前で示すこともできた。
このような決意を中身のあるものとするためには、ウクライナ侵略の影響をはじめ、気候変動やパンデミック(感染爆発)など複合的な危機に直面するグローバルサウスや、脆弱(ぜいじゃく)な立場にある国際的なパートナーの声に耳を傾け、幅広い課題に協力する姿勢を示すことが大切だ。食糧危機にG7と招待国が連帯して取り組む行動声明や、多様な道筋に配慮した脱炭素社会の目標、国際保健への資金貢献など具体的な協力方法を共有することができた。
こうして、サミットは概ね成功したといってよい。
ところで、G7サミット前に、自公両党でLGBT法案を修正して国会に提出した。先に自民党を含む超党派で合意した原案と法律上の意味は変わらないとの衆院法制局のお墨付きを得たので、自民党内の異論に配慮して修正したものである。
G7首脳声明には、「ジェンダー平等の実現は、強靱(きょうじん)で公正かつ豊かな社会のための基本である」として、「あらゆる人々が性自認、性表現あるいは性的指向に関係なく、暴力や差別を受けることなく生き生きとした人生を享受することができる社会を実現する」とのくだりもある。
議長国の名に恥じない立法府の合意形成を期待する。
(公明党代表)
【2023年5月24日(23日発行)付 夕刊フジ掲載】