自公連立激震の真相
2023.06.07
政府は6月中旬をメドに、「経済財政運営と改革の基本方針2023」(骨太の方針)を決める。これに先立ち、公明党は1日、高木陽介政調会長らが、岸田文雄首相に対して提言を行った。
与党の役目は、「人々が幸せや豊かさを実感できる社会を構築すること」である。最重点は、直面する物価高に負けない持続的な賃上げだ。コスト増を価格に転嫁した物価高が賃金上昇を引き出し、消費が鈍らず維持拡大し、売上増に結びつく。それが次の賃金上昇の流れをつくり出すという、「成長と分配の好循環」を実現することが重要だ。
そのためには、産業のグリーン化やデジタル化など成長分野への大胆な投資が必要となる。その担い手を育てるために、「人への投資」が大事だ。
産業や人材の損耗を防ぐため現在進めている「防災・減災5か年加速化対策」と、その後の対策の見通しを示すことも必要だ。
全国の地域に活力がみなぎるように、中小企業支援と観光立国復活は欠かせない。
特に、長い目で、産業や社会の持続可能性を確保するためには、抜本的な「少子化対策」が鍵を握る。昨年11月、公明党が発表した「子育て応援トータルプラン」をベースに、まずは、この3年間に優先的・集中的に取り組む具体策や財源の考え方をとりまとめ、「骨太の方針」にも反映させる。
岸田首相は、これら公明党の提言を受けて、「できるだけ反映したい」と応じた。
次期衆院選に向けて、「10増10減」の区割り変更を受け、公明党は、増える10選挙区のうち、埼玉、千葉、東京、愛知について、積極的に擁立すべく自民党と協議を積み重ねてきた。埼玉14区と愛知16区は協議が整い、千葉は先の5区補選に臨むため断念した。
東京については、5月中の調整を要請していたが、自民党は、党幹部から自民党現職のいない28区でも推薦困難と、公明党現職がいる29区も都連幹部から実質的に応援しないと通告してきた。これでは、東京での「選挙協力ゼロ回答」であり、これまでの経過を無視した驚くべき結論に公明党側はがくぜんとした。
やむなく、公明党も「東京では自民党候補を推薦しない」と回答せざるを得なくなった。しかし、東京以外の協力関係は維持されており、これを変えないとした。
2012年、自公で政権奪還したときの安倍晋三首相が、私に語ったことを思い出す。
「与党の失点によって政権を失い、代わった政権は稚拙な運営で瓦解(がかい)した。その間の不利益は国民が被り、国益を損なった。二度とこのような失敗を繰り返してはならない」
こうして自公の政権合意を結び、幾多の風雪を乗り越えて「政権の安定」と「政治課題の克服」を進めてきた。
この自公連立の原点を踏まえれば、自公連立を揺るがせてはならないし、大局観に立って政権運営に努めるべきである。
去る5月30日の党首会談で、このことを党首間で確認した。
(公明党代表)
【2023年6月7日(6日発行)付 夕刊フジ掲載】