安倍氏、オバマ氏と示した「和解の力」
2023.07.05
来る8日、安倍晋三元首相の一周忌を迎える。この一年、あっという間であり、「安倍さんがいれば…」と強く感じることもあった。
広島G7(先進7カ国)サミットで、岸田文雄首相が、ジョー・バイデン米大統領らとともに平和記念公園内の原爆資料館を訪れ、慰霊碑に献花したことは記憶に新しい。これが実現できたのは、安倍首相・岸田外相時代の2016年5月、バラク・オバマ米大統領の広島訪問が布石となっている。
安倍氏が政権を奪還して初の米国訪問(13年2月)前に私と党首会談を行った際、私から「オバマ大統領訪日の機会に被爆地の広島か長崎の訪問を要望しては」と語りかけた。安倍氏は「そうなると謝罪してもらわなければなりませんね」と、言外に難しいとの判断をにじませた。
しかし、さまざまな状況を積み重ねて、ついにオバマ大統領の広島訪問にこぎ着けたのである。そこには「謝罪」の求めはなかった。さらに、安倍氏は16年12月、オバマ大統領とともにハワイ真珠湾を訪問し、慰霊と平和の誓いをもって「和解の力」を示したことが忘れられない。
もう一つ、安倍氏との思い出がよみがえる。17年の解散総選挙のころだ。
安倍氏は解散について軽々に言質を与えるようなことはしない。しかし、後で振り返ると何気ない会話のなかに示唆されていたことに気づくのである。
私がロシア訪問中の同年9月16日、サンクトペテルブルクの視察先に突然、安倍氏から電話が入った。「解散を決めた」との知らせだった。同行した記者団に慌てて別室に移動する様子を見られて、電話の内容まで悟られてしまった。
同月28日臨時国会で冒頭解散、10月10日総選挙公示、22日投票日となった。思い返せば、訪ロ前に安倍氏と交わした会話のなかにヒントが示されていた。
このところ、岸田内閣の支持率は各種世論調査で下落傾向だ。中でも、先々週の毎日新聞で12ポイントも急落したのに続き、先週の読売新聞では15ポイントも下落した。
主たる原因は、メディアも指摘するように、マイナンバーカードをめぐる相次ぐトラブルだろう。
支持率挽回のためには、マイナス要因を減らし、プラス要因を増やす努力を積み重ねていくことが大事だ。
マイナンバーカードをめぐっては、5日に衆院の閉会中審査も行われ、参院も続くであろう。課題を掘り下げてもらいたい。そのうえで、トラブルの要因を解明し、再発防止策を徹底することだ。
マイナ保険証については、トラブル解消に加え、国民一人一人にとって健康保持や病気の予防・治療に役立つ利便性を丁寧に説明するとともに、不安を解消する措置も早く示してもらいたい。
また、少子化対策として示した「こども未来戦略」の周知徹底だ。
3年間で集中的に取り組む加速化プランを実施すれば、OECD(経済協力開発機構)諸国で、子ども一人当たりの家族関係費トップのスウェーデンの水準に達することを、具体的内容とともに浸透を図ることが大切だ。
いずれも政府与党が連携し、スピード感をもって進めていきたい。
(公明党代表)
【2023年7月5日(4日発行)付 夕刊フジ掲載】