岸田内閣の支持率低下と経済対策
2023.10.25
先週20日に召集された臨時国会は、岸田文雄首相の所信表明演説が週明け23日にずれ込む異例のスタートとなった。所信に対する各党の代表質問は24日に始まる。
最近の報道各社の世論調査で、岸田内閣の支持率が軒並み低下し、政権維持の「危険水域」とされる30%以下の調査結果も複数出てきた。調査のなかで、支持率以外の個別課題の設問を見ると、福島第1原発処理水の海洋放出や、旧統一教会の解散命令請求については、評価が過半数に達している。この分を差し引いて、支持率を下げるほどの大きな要因は見当たらない。
22日は衆参補欠選挙の投開票日だった。その前に岸田首相だけ所信を述べて、野党の代表質問は週をまたぐのはフェアではないと批判された。支持率の低下要因を除くために、所信も週明けに回したといわれている。
支持率を上げる要因をつくり出そうと思いついたわけではないだろうが、岸田首相は召集日の20日、自民党の萩生田光一政調会長と宮沢洋一税制調査会長、公明党の高木陽介政調会長と西田実仁税制調査会長を、それぞれ官邸に呼んで「所得税減税」も含めた具体化を検討するよう要請した。
それを受けて、岸田首相は23日の所信表明で、「成長による税収の増収分の一部を公正かつ適正に還元し、物価高による国民の負担を緩和する」としたうえで、「還元措置の具体化に向けて近く政府与党政策懇談会を開催し、与党の税制調査会に早急な検討を指示する」と述べた。
減税については、首相自身が9月25日、「税収増などを国民に適切に還元する」と口火を切ったが、「賃上げ減税」や「投資減税」など国民に直接恩恵が及ぶものではないため「偽減税」などと批判され、鈴木俊一財務相や自民党幹部から反対意見が出るなど迷走気味になった。
減税は、年末の与党税制調査会の協議で例年決定されるので、「所得税減税」も含めた結論を出したいなら、与党の足並みがそろうように運ぶ必要がある。
そこで、いきなり所信で与党に混乱を与えないように、また野党の代表質問で攪乱(かくらん)されないように、あらかじめ与党の政策責任者に道筋を示して、合意形成を図るシナリオを示したものと思われる。
22日の衆参補選の結果は1勝1敗。出口調査によれば、直前の「減税」要請が投票行動に影響を与えたと見るのは無理がある。最終盤で「減税」を掲げても、有権者の関心を呼び起こすほどの浸透は図れない。この結果が、首相の解散戦略に直ちに影響することはないだろう。
解散判断は首相の専権事項である。世論調査では「経済対策」への期待感は高くないが、中身の具体化はこれからであり、仕上がり具合と国民の評価が気になる。予算委員会での新閣僚の答弁ぶりなども注視していくことになる。
(公明党代表)
【2023年10月25日(24日発行)付 夕刊フジ掲載】