岸田首相「総合経済対策」好ましい循環の定着を
2023.11.08
岸田文雄首相は2日、「デフレ完全脱却のための総合経済対策」を政府与党政策懇談会で説明し、夕刻の臨時閣議で決定し、記者会見に臨んだ。
政権スタートから2年余り。ようやく、30年ぶりの賃上げ水準や、過去最大の民間投資、物価も上がり経済のパイが広がった。今年4ー7期には名実ともに過去最高のGDP(国内総生産)となるなど、「デフレ脱却」の兆しが現れてきた。
今回の経済対策は、物価が上がっても、賃上げが続いて消費が落ち込まず、企業も投資を進めて、物やサービスの価値を上げていくーという好ましい循環を定着させ、日本経済を成長軌道に乗せていくために行うものだ。
何をやるか。今は、賃上げしても物価高に追いついていないので、来年以降、賃上げが追いつくまで消費が落ちないように、購買力を補う対策として減税と給付を組み合わせる。
最も困っている住民税非課税世帯には、7万円を先の3万円に追加して合計10万円の給付を年内に届けるための補正予算を成立させる。
納税者には、扶養家族を含めて、所得税と住民税合わせて一人当たり4万円の「定額減税」を、来年6月のボーナス時期に実施する。来年の春闘の成果と相乗効果を実感できるタイミングに合わせ税制改正と実施の準備に当たっていく。
扶養される子どもにも定額減税分が届くので、「子育て支援型減税」となる。親の所得で子どもを分断する所得制限は望ましくないということになろう。
少し検討を要するのは、給付と減税の間にいる人への対応である。納税水準に応じた給付の制度設計を急ぎ、財源を手当てして、速やかに実施すべきである。
合わせて、中小企業が賃上げできるよう、価格転嫁や生産性向上、賃上げ税制拡充などで環境整備する。
この局面をしのいで、「脱炭素」や「デジタル化」への投資を進め、これまでのコストカット型から成長型経済に転換し、デフレ完全脱却を成し遂げたい。
岸田首相は、派手なパフォーマンスはせず、「先送りできない課題を一つ一つ解決していく」と繰り返し、粘り強くひたむきに取り組んでいることは、もっと評価されてよい。
振り返ると、「防衛力強化」や「広島G7(先進7カ国)サミットの成功」「新型コロナの5類移行」「旧統一教会の解散請求」「福島第一原発処理水の海洋放出」など、国民的関心の高いテーマでは、世論の支持を得ており、功績を挙げている。
それでも、岸田内閣の支持率は、先週末の各社世論調査で過去最低を更新した。
これは、先月25日の山田太郎文科政務官に続いて、31日、柿沢未途法務副大臣の辞任が相次いだことも影響しているだろう。政策面の成果が帳消しとならないよう、人事には周到な目配りを要する。
決めたばかりの経済対策は十分に浸透しておらず、政府与党が結束して丁寧な説明を尽くし、確実に成果を届けることが大切である。
(公明党代表)
【2023年11月8日(7日発行)付 夕刊フジ掲載】