訪中で確認したい「平和友好条約」の意義
2023.11.22
創価学会の池田大作名誉会長が15日、老衰のため95歳で逝去された。池田氏は1964年に公明党を創立した。明年の結党60周年を目前に他界されたことは哀悼痛惜の念に堪えず、偉大なるご功績を偲びつつ衷心よりご冥福をお祈り申し上げる。
見守ってくれた創立者を失い、公明党はどうなるのかとの声も聞かれる。
池田氏の示された「大衆とともに」との立党精神は、今も変わらぬ原点として脈々と受け継がれ、全国約3000人に上る議員の骨身に染み込んでいる。「小さな声を聞く力」などのキャッチフレーズは今日的な実践の姿勢を現している。
創立時、「大衆福祉」や「世界平和」など政治の目標を掲げ、与党として試行錯誤するなか、「ネットワークを生かした政策実現力」をうたって実績を重ねている。
池田氏が公的な場所に姿を見せなくなった2010年以降も、公明党は与野党の経験を経て今日の政党のスタイルを確立してきた。これからも、公明党は微動だにせず、立党精神を永遠に守り抜き、幅広い合意形成の役割を果たしていきたい。
池田氏の日中関係に果たした役割は広く知られている。1968年に「日中国交正常化提言」を発表し、公明党が仲介の上、72年に田中角栄首相のもとで「日中国交正常化」が実現する。このたびの訃報に対し中国メディアも68年の提言に言及している。
74年、病床にあった周恩来首相は池田氏との会見を強く望み、「日中平和友好条約」の締結に並々ならぬ執念を見せたと伝えられている。
日中平和友好条約は福田赳夫首相のもとで78年に締結され、本年は45周年の節目にあたる。この条約の眼目は「日中は互いに脅威とならず、覇権を求めない」というところにある。友好を旨とし、互いに協力して協調的な方向を目指すことにあると捉えたい。
近年、日中関係は良好なものとは言い難い。安全保障環境は厳しさを増し、新型コロナ感染症が交流を困難にし、国民感情の悪化に拍車を掛けた。ようやく交流の兆しが出てきた。
先のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の際、岸田文雄首相は、習近平国家主席と米サンフランシスコで首脳会談を行い、約1年ぶりに対話の機会を得た。両首脳は対話が重なっていくことに期待感を示した。
延期になっていた公明党の訪中が22、23の両日実現する。この機会に、池田氏の日中関係に果たした役割を振り返りながら、平和友好条約の意義を共有し、懸案事項については率直に語って解決の方途を探るとともに、協力できるテーマについても話し合いたい。与党として、両国首脳が往来できる道筋をつけていくことが大切だ。
先立つ14日、岸田首相と懇談し、厳しい批判を甘受し、真摯(しんし)に政権運営にあたることを確認した。
(公明党代表)
【2023年11月22日(21日発行)付 夕刊フジ掲載】