衆院解散の論調も、国民の信頼回復が王道
2024.03.20
先週14日、衆院に続き、参院史上初めて政治倫理審査会がフルオープンで開催され、自民党安倍派の世耕弘成、西田昌司、橋本聖子の3氏が出席した。キックバック(還流)の扱いを話し合った安倍派幹部の協議に出席していたことで注目された世耕氏は「キックバックの取り扱いには関与していなかった」「この時に何か確定的なことは決まっていない」と述べた。
各種世論調査でも、国民の不信感は強い。17日の自民党大会で来賓挨拶した私は「説明責任を果たそうとしても国民の納得感を得られるところに至っているとは言えない状況だ」と指摘した。
さらに18日、幹部協議に出席していた安倍派事務総長経験者である下村博文氏が衆院政倫審に出席したが、「幹部協議で還付継続を決めたことはないし、いつ決めたか知らない」と述べ、不透明感は払拭されなかった。
4月には衆院で3つの補欠選挙が予定される。自民党が持っていた議席であるが、公認候補は島根1区のみで、他は候補すら決まっていない。岸田文雄内閣も自民党も支持率が低迷するなかで勝利は見通せていない。
この機の衆院解散に触れる論調もあるが、首相の専権事項であり言及は控える。国民の信頼回復に向けて手立てを講じ、手応えをつかんでいくことが王道であろう。
日本が英国やイタリアと共同開発する次期戦闘機については、岸田首相が13日の参院予算委員会で、第3国への輸出は「3つの限定」と「2重の閣議決定」という厳格な決定プロセスを経ることで平和国家としての基本理念を堅持する旨を説明し、与党も大筋合意し輸出を容認した。
これから10年以上かけて開発が行われるが、次期戦闘機の要求性能は3国で異なる。輸出でコストを下げようとする英国やイタリアに比べ、日本ができないと、要求性能の交渉で不利になる。日本の防衛のための要求性能を確保できなければ本末転倒である。交渉上不利にならないために、開発当初から輸出できる仕組みを整えることが必要だと岸田首相は説明する。
米国以外の非同盟国との共同開発は初めての経験だ。輸出しない前提で始めたが政策変更を余儀なくされた。そこで、この次期戦闘機に限って与党や国会での議論を経て閣議決定で決めることにした。
岸田首相は「限定」には触れたが、なぜ輸出するか十分な説明はしていない。相手国や地域の抑止力に寄与するとの主張もある一方で、緊張を高める可能性や国際情勢の変化、相手国の政権や政策の安定度などを見極める必要があるとの見方もある。
首相は、実際の輸出の際も、案件ごとに与党の協議を確保し閣議決定することとした。その際は国会での議論の機会も含めて、国民への説明と理解を求める必要がある。
(公明党代表)
【2024年3月20日(19日発行)付 夕刊フジ掲載】