補選全敗、自民党に有権者が鉄槌
2024.05.01
28日、衆院3選挙区で補欠選挙が投開票された。島根1区は与野党対決、長崎3区は立憲民主党と日本維新の会の野党対決、東京15区は野党、諸派9候補の乱戦と、それぞれ特色があったが、これまで議席を有していた自民党が全敗し、立憲民主党の候補が勝利を独占した。
有権者の関心は自民党の政治資金パーティー収入不記載事件とその対応にあった。自民党の対応は、当事者の明快な説明には至らず、党の関係議員に対する処分も党内に不満がくすぶり、国民に納得感が生まれず、政治資金改革に向けての独自案は与党協議で公明党から強く迫られての後出し感がある。
これでは、失われた信頼を取り戻すには不十分であり、有権者の怒りが補選で噴出した感がある。マスコミからは「鉄槌(てっつい)が下された」と評され、自民党議員からは「お仕置きをしようとの圧力を感じる」との受け止めも聞かれ、有権者からは「お灸を据えないとダメだ」との声も上がる。
島根1区は保守王国といわれ、自民党幹部も相次いで応援に入り、岸田文雄首相も最終日を含めて2度も駆けつけた。公明党も推薦を出し、幹部が支援を訴えた。細田博之前衆院議長の死去による補選であり同情票も期待されたが、事件の中心となった安倍派(清和政策研究会)の会長だったこともあり、広がりを欠いた。これだけ支援の厚みがありながら惨敗を喫したことは、いかに不信感が根強いかということを肝に銘じなければならない。
東京15区では、特定の候補者と陣営が、他の候補者や陣営に対し演説中に遊説カーで接近し大音量を流して威嚇し、候補者の訴えを聞き取れなくしたり、誹謗(ひぼう)中傷を繰り返したりした。警視庁は公職選挙法の「選挙の自由妨害罪」を念頭に「警告」を発したが、止まることはなかった。
選挙は、候補者や政党などが政治信条や政策を有権者に訴えて支持を求める民主主義の基盤である。有権者とのコミュニケーションの機会を奪い妨害する行為は許されない。これまでは遊説の場所が競合すれば、話し合って調整したり、他陣営の演説中は音量を下げて通過するなど選挙のマナーを守っていた。
こうした妨害行為を「表現の自由」を盾に安易に容認してはならない。岸田首相は22日の衆院予算委員会で「選挙制度の根幹に関わる」として厳しい認識を示した。法改正で規制を強化すべきとの主張もあるが、まずは、公選法の「選挙の自由妨害罪」や刑法の「脅迫罪」「道路交通法違反」など現行法を厳格に適用し、有権者との意思疎通の機会を保障してもらいたい。
後半国会の道のりは険しい。いずれ衆院選を迎えるにしても、政治資金規正法を今国会中に改正して再発防止策を確立することが必須であり、信頼回復がなければ、他の政策を推進しても効果が薄れてしまいかねない。
自民党は真摯(しんし)に公明党との協議に臨み、国会での合意形成に責任を果たすべきである。
(公明党代表)
【2024年5月1日(30日発行)付 夕刊フジ掲載】