政治資金改革 政治家の「監督責任」が本丸
2024.05.15
自民党の茂木敏充、公明党の石井啓一両党幹事長及び実務者の間で9日、政治資金の改革に関する与党の取りまとめが行われ、今国会で政治資金規正法の改正案成立に万全を期すことが確認された。
改革の目標は2つある。1つは、政治資金パーティー収入の規正法違反事件の再発防止策であり、会計責任者だけではなく政治家も責任を負う仕組みを作ること。もう1つは、政治資金の流れを透明化して有権者の判断に委ねようという規正法の本義に基づき透明性を強化することだ。
与党の取りまとめでは、再発防止策として、政治家に会計責任者に対する監督責任を負わせ、監督すべき事項を確認した旨の「確認書」を政治家が署名して報告させることにする。ここが改革の本丸である。
会計責任者が収支報告書の不記載等で処罰された場合、実際の確認を怠って確認書を交付した場合は政治家も罰金刑に処され、「公民権停止」となる。いわゆる「連座制」を強化することとした。
透明性の強化策として、政治資金の管理は金融機関の預貯金口座によるものとし、支出のみならず「収入」も外部監査の対象とする。収支報告書のオンライン提出やインターネット公表を義務づけるものとし、デジタル時代にふさわしい透明化を図る。
透明化で一致に至らなかったのは、政治資金パーティー収入の公開基準引き下げと、いわゆる「政策活動費」の使途公開である。
公明党は政治資金パーティーの公開基準について、公職選挙法の寄付公開基準と同じ5万円を主張したが折り合わず、「現行20万円から引き下げる」との方向性だけを確認した。
「政策活動費」について公明党は、実際に使った者が使途明細を公表することを主張したが、「支払いを受けた者がその使途を報告し、収支報告書に記載する」との方向性を確認するにとどまった。
今後、与野党の合意形成に向けて、与党の「取りまとめ」をもとに野党と協議し、隔たりを埋めていく努力が大切だ。野党の中には、政治資金パーティーや「政策活動費」の支出を行っていた政党もあるので、経験に基づく意見もあるだろう。建設的な協議を期待したい。
なお、外国人献金が法律で禁止されているなかで、パーティー券収入の非公開部分があるとバランスが取れないので、購入を禁止すべきではないかとの意見がある。政治資金を通じての外国の干渉を防ぐとの観点から議論はあり得よう。
大型連休明けに岸田文雄内閣の支持率が上昇した世論調査もあったが、このまま上昇軌道を描くと楽観する人は皆無に近い。
13日の政府与党連絡会議では、参院側の出席者から「会期末まで実質30日」として、政治資金規正法はもちろん、対決含みの重要法案も残っており、運営は容易ではないとの指摘が相次いだ。
補選全敗のショックも引きずる中で国民の信頼回復への道のりは険しいことを肝に銘じて政権運営に当たらなければならない。
(公明党代表)
【2024年5月15日(14日発行)付 夕刊フジ掲載】