米大統領選に向け備えるべきこと「対話と協調」で日本の孤立防げ
2024.08.07
米国の大統領選挙は、民主党のカマラ・ハリス副大統領と共和党のドナルド・トランプ前大統領の戦いとなることがほぼ決まった。ハリス氏が近く副大統領候補を決めると正副大統領候補の組み合わせが明確になり、いよいよ9月以降のテレビ討論に注目が集まっていく。
11月5日に迎える投開票の結果は予断を許さず、米国民の選択を見守ることになる。最重要な同盟国である日本の政治家が米大統領選の行方をあれこれ論評することは控えなければならないが、結果に対して与党がどのような点に備えが必要か、頭の体操をしておくことは大切である。
ハリス氏が勝てば、民主党政権の延長として予測が立ちやすい。初の女性大統領としてどのような変化をもたらすか、これからの選挙戦での主張を分析しておく必要がある。
トランプ氏が勝つとどうなるか。「もしトラ」などとさまざま語られているが、前政権での行動と今回掲げる政策からおよその備えが浮かんでくる。
経済や外交・安全保障についてバイデン政権とは異なるアプローチがありそうだ。経済については、「米国第一主義」を掲げ、保護主義的な政策が予想される。輸入品に関税をかけ、米国内投資を促し、雇用創出を歓迎しそうだ。気候変動に関するパリ協定から再脱退し、石油・天然ガスなど国産エネルギー資源の生産と輸出に積極的になるだろう。電気自動車(EV)シフトにはブレーキがかかるかもしれない。
日本の脱炭素化や経済の好循環によるデフレ脱却の流れと調和的に進められるかが重要だ。
外交・安全保障については、欧州や中東への関与を見直し、中国との対抗を強め、同盟国への負担をさらに求めてくるともいわれる。日本が孤立しないよう対話と協調により理解と協力を求めていく粘り強い対応が求められる。
先の東京都知事選を受けて、選挙のあり方をめぐって公職選挙法改正が議論されている。衆院の東京15区補選も含めて、これまでの常識を逸脱して、有権者の憤りや不快感を招く言動が横行したことから、各種世論調査でも是正を求める声が圧倒的である。
基本的に、わいせつ行為、道路交通法に違反する行為、名誉毀損(きそん)行為など現行法で対処できることは厳正に運用すべきである。先の選挙は候補者の氏名を書いて1人の当選者を選んでもらうのだから、その当選目的とかけ離れた行為は公費で賄う選挙運動にふさわしくない。
候補者の顔も氏名も表示されていないポスターや営業目的に利用するポスターなどを掲示板に貼らせる必要があるのか。憲法で保障された政治活動の自由や表現の自由は尊重されなければならないが、有権者の自由な投票を妨げるものであっては本末転倒であり、おのずと制約があろう。
選挙運動に名を借りた過激なネット動画の多視聴が収入源となり、供託金が無意味になってしまうことも問題がある。政党が多数の候補者を立ててポスター掲示枠を確保して売買することも放置してはおけない。
現行法や運用の虚を突く行為が後を絶たないが、有権者の良識はそのような候補者にみるべき得票を与えていない。健全な民主主義を守らなければならない。
(公明党代表)
【2024年8月7日(6日発行)付 夕刊フジ掲載】