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ブログ「本音でズバッと」

総裁選に望む「信頼回復」と「リーダーシップ」

2024.08.21

岸田文雄首相は14日、9月の自民党総裁選に出馬しないことを表明した。会見に先立って電話で決断の経緯を伝えてきた。おそらく立て続けに要路に電話を架けたと思われ、澱(よど)みなくこれまでの3年弱にわたる任期を振り返り、自己総括をした上で不出馬を明言した。突然のことであり、驚くとともに、岸田首相が「先送りできない課題」に真面目に粘り強く取り組んでいただけにいささか残念でもあった。

岸田氏は、政権の実績として、賃上げ、エネルギー政策の転換、少子化対策、防衛力の強化、G7広島サミットなどを挙げ、「自負している」と私に語った。確かに、政権合意の柱は、新型コロナ感染症を乗り越えて国民生活と経済を立て直し脱炭素社会を構築することであったから着実に政策課題を実現してきていることは冷静に評価されてよい。

30年続いたデフレ経済に終止符を打つべく賃上げが広がり実質賃金もプラスになり、名目国内総生産(GDP)は年率換算で600兆円を超えた。この秋に最低賃金が引き上げられ、来年春闘でも賃上げが継続できれば構造的な好循環に希望がつながる。脱炭素社会構築に向けてもGX投資や政策転換が幅広く進み出したところだ。少子化対策は特に公明党が提案した「子育て応援トータルプラン」がベースになって3・6兆円規模の厚みのある少子化対策が3年間の集中取り組みにより上積みされる。

岸田氏は被爆地広島出身の首相として核兵器のない世界に思いを寄せた。G7広島サミットを開催し世界の首脳に被爆の実相を伝えた。以後、広島や長崎を訪れる人々はインバウンドを含めて過去最多を記録している。具体的な核軍縮の成果には至っていないが、世界の人々とりわけ若い世代に被爆の実相が浸透していく機運を醸成したことは間違いない。

こうした実績は芽が出始めたところであり、継続的な取り組みで効果を実らせていくことが大切である。

一方で、岸田氏は旧統一教会の問題と派閥の政治資金パーティーをめぐる「政治とカネ」の問題で国民の政治不信を招き、信頼を取り戻せていないことに責任があると述べた。派閥を解消し、政倫審に自分も出席し、パーティー券購入の公開上限引き下げについても国民の方を向いて重い決断をした。最後に残っていた組織のトップとしてケジメをつけるために、秋の自民党総裁選には出ないことにすると言い切った。

「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」との心境か、察して余りある。「聞く力」と「伝える力」をさらに発揮できるとよかった。

自民党総裁選は岸田氏がいうように、自由闊達な論戦を通じて、国民に向き合い、信頼を回復し、希望に応え、連立政権をともにできるリーダーシップを競い合うことを期待する。

岸田氏の思いが込められた言葉が耳に残る。

「私が身を引くことが、自民党が変わることを示す最もわかりやすい最初の一歩」との言葉だ。国民に向けて新総裁になろうとする人が「次の一歩」を示すことになる。

(公明党代表)

【2024年8月21日(20日発行)付 夕刊フジ掲載】