「財源は与党で考えろ」ではあまりに無責任
2024.11.27
政府与党は22日、「総合経済対策」を決定し、石破茂首相はその実施を裏付ける補正予算の編成を政府に指示した。この中には、20日の与党と国民民主党の合意に基づき、「103万円の壁」を2025年度税制改正の中で議論し引き上げることや、「ガソリン減税」について自動車関係諸税全体の見直しに向けて議論し結論を得ることなどが盛り込まれた。
自公連立政権が少数与党のため、予算や法案を成立させるためには、野党の協力が必要である。中でも、これまで政策協議の実績があり、衆院選で躍進した国民民主党と協調することが民意に沿う現実的な対応だ。
「103万円の壁」というが、与党は、18年に「特別配偶者控除」を拡充し、150万円を超えてから控除額を段階的に減らす制度にしたので、世帯の収入が減ることはなくなり、配偶者については税制上の「壁」はなくなっている。
扶養控除の対象となる子供のアルバイトには税制上の壁は残っている。そのうち学生については「勤労学生控除」により130万円まで所得税はかからない。
いずれにしても、壁を乗り越える制度が周知・利用されておらず、心理的な壁は存在する。
国民民主党は103万円の控除枠を178万円に引き上げるべきだと主張する。しかし、7兆~8兆円の税収減を招き、財源が課題となる。「財源は与党で考えろ」ではあまりに無責任である。
全国知事会など地方団体からは、自治体の減収につながることを懸念する声が次々と上がる。実際、東京23区全体の個人住民税は2400億円の減収となり、給食費の無償化や子供の医療費助成などの継続が困難になるとの悲鳴が上がる。
25日から自民党、公明党の税制調査会の議論が始まった。予断を与えることは控えるが、政党間の合意を尊重しつつ、財源への配慮を加えながら、財務省出身である国民民主党の玉木雄一郎代表や古川元久税制調査会長の理解を求めながら、現実的な結論を見いだすべきである。
合わせて、106万円や130万円の「社会保険料の壁」を含めて、広い視野での議論が望ましい。「ガソリン減税」については脱炭素社会を見据えた抜本的な議論が求められる。
もう一つの与野党間の大きな政治課題が「政治資金規正法の再改正」である。政治資金の流れをチェックし透明性を確保する第三者機関を設置することが最重要だ。いわゆる政策活動費は廃止する方向で与野党ほぼ一致している。企業・団体献金の禁止が焦点となる。
これまで、政治活動を維持するために、政治資金の提供による政治参加が許され、その流れを止めることではなく、透明化することが重要だとされてきた。各党の政治家が自らのあるべき政治活動の足下をみて、誠実に、オープンに議論し国民の理解を得ることが大切だ。
(公明党常任顧問)
【2024年11月27日(26日発行)付 夕刊フジ掲載】