企業団体献金の是非 それぞれの「本音」
2024.12.11
9日から臨時国会は第2ラウンドに入った。同日提出された補正予算の審議と政治改革関連法案の審議が並行して行われる。
政治改革に関しては、第三者機関の設置を含めて政治資金の透明性を高める法案と、立憲民主党などが共同提出した企業団体献金の禁止法案などがあり、幅広い課題の合意形成を模索するなかで、今後も法案提出がありうる。
現行法は、企業団体献金を認めた上で一定の制限を設けながら透明性を図る仕組みを原則としている。
これに対し、禁止すべきとの意見は、献金そのものが政治をゆがめているとの考えが根底にあるようだ。そうだとすれば、個人も同様であり、企業団体だけ禁止する理由を説明する必要がある。
1970年の八幡製鉄政治献金事件の最高裁判決は、結論として企業団体献金は憲法上認められるとした上で、「公共の福祉に反しない限り」と留保条件を付けた。「公共の福祉に反しない献金」の肯定説と否定説に言及し、政党の意義にも触れている。政党が慈善団体のような公益的な存在なら許され、そうでないなら許されないとなる。
与野党からは、全面禁止や政治団体を除いて禁止との意見と、公開の徹底や上限の規制を図る意見などさまざまな考え方が出されている。
先の最高裁判決が出された当時と異なる状況が2点ある。政党助成金が交付されるようになり、資金提供とその意図が切り離され、政治をゆがめる余地がなくなったとの理解だ。助成金をもらいながら企業・団体に献金を求めることは整合性がないから禁止すべきという声になる。
これに対し、政治活動の自由は保障されなければならず、助成金だけで賄えない政治活動は献金を求めざるを得ないとの意見や、政治活動の自由を確保するため政府から助成金を受けないとの意見もある。小選挙区制の実施により、同じ土俵で対等に勝負するためには、企業団体献金を拒否することは現実的ではないという変化もある。
禁止を求める意見の本音は、政権第1党に事実上企業団体献金が偏りがちになるので、禁止しないとフェアではないとの思いがあるだろう。
方や、企業団体献金で意思決定が現実にゆがめられるわけではなく、日常の政治活動を支えていくには助成金だけではとても足りず、わずかな個人献金と助成金でできる範囲の活動に限定されると民主政治の基盤が狭小になってしまうとの見方もある。
これを機に、利害のぶつかる政党や政治家の議論だけに委ねず、専門家の意見も聞きながら、最高裁判決の「公共の福祉に反しない献金」のあり方を深めた上で、本音で合意形成を図るべきである。
私は来夏の参院選東京選挙区に立候補しないこととし、若い世代に道を開くことにした。公明党の定年制の例外として議席を持ち、これまで党代表として自らのことを後回しにして公認作業にあたってきた。今後のことは、今の党執行部に委ねることにする。
(公明党常任顧問)
【2024年12月11日(10日発行)付 夕刊フジ掲載】