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ブログ「本音でズバッと」

衆参同日選は政権交代リスク

2025.01.15

石破茂首相は9日から12日まで、就任後初めてマレーシアとインドネシアを訪問し2国間外交を展開した。マレーシアは今年の東南アジア諸国連合(ASEAN)議長国でありエネルギー資源の豊かな国である。インドネシアはグローバルサウスの代表格として政治・経済とも存在感を増しており、いずれも海洋国として自由で開かれたアジア・太平洋の安定に欠かせないパートナーである。

石破首相は就任後、ASEAN、APEC、G20それぞれの首脳会議など多国間外交の舞台にはデビューしたが、日本外交の独自性を発揮するためには2国間外交を戦略的に展開することが重要である。特に、国際社会が混乱要因を抱え不透明感が漂うなか、日本は分断を防ぎ対話により協調を作り出す役割が期待されている。その布石となる訪問である。

訪問に先立つ8日、私は石破首相に会談の機会をいただき、近年、公明党代表団を率いてASEAN諸国を訪問し海上保安協力や地雷除去支援の継続的取り組みの重要性を確認した旨報告した。合わせて米中を含む多国間安保対話枠組みの構築についても意見を伝えた。

石破首相は米大統領選後、ドナルド・トランプ氏との早期会談を模索したが、G7首脳の中で唯一会談が実現できていない。その一方で、中国との関係改善の兆しが出てきた。昨年の日中首脳会談後、岩屋毅外相が訪中し、日本人のビザなし訪中の再開など具体的課題の前進が見られた。13日からは与党交流協議会が北京で開催され、自公の幹事長らが訪中した。

こうした動きに対し、SNSなどでは石破外交の中国重視が目立ち、米国との関係構築が後れを取っているとの批判が出ている。

石破政権は、トランプ大統領の就任後2月前半の訪米を調整しているようだ。1月20日の就任式には異例の招待を受けて岩屋外相が出席する。最重要な日米関係だからこそ、就任後の政権の姿勢を確かめながらトランプ時代の基本的信頼関係を構築してもらいたい。

昨年末から、「大連立」や「衆参同日選」の観測が出ている。その背景は衆議院で少数与党だからだ。参院で過半数を保つといっても衆院で予算や法案が与党だけで可決できない以上、政権基盤の脆弱(ぜいじゃく)さは免れない。

それを解消するために多数を確保しなければならないが、案件ごとのパーシャル合意の使い分けでは、不安定感が付きまとい、政策全体の整合性や財源確保も限界に突き当たる。政権を安定させて内外の重要課題に向き合うためには、野党第一党と「大連立」を組むか、衆参同日選により一気に両院の過半数を確保するかしかないとの見方につながる。

しかし、今夏の参院選を控えて政権交代を叫ぶ野党が与党を利する「大連立」に易々乗るとも思えない。「衆参同日選」も政権交代による混乱の恐怖感で与党が勝つとの前提はもはや存在せず、下手をすれば、いっぺんに政権交代のリスクもある。憲法は、衆参の任期を異にし、参院は3年ごとの半数改選であり、衆院に解散を設けて選挙の重なりを回避できるようにしている。総じてできるだけ新鮮な民意を取り込めるようにしているのであって、一度に大量の民意を固定化してしまうやり方は民主主義の本筋から外れるとの趣旨なのである。

(公明党常任顧問)

【2025年1月15日(14日発行)付 夕刊フジ掲載】